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第1話

色々な事情があって。 僕、有坂 律(アリサカ リツ)はこの家に来ることになった。 一番の要因は義母の再婚だったりする。突然のことで周囲の人間に何も言うことが出来なかったのが、心残り。 義母は仕事が忙しく、再婚と言っても式は挙げず、いつだって僕のことなんか考えていない。 いつも僕に相談することなく決めてしまう。それが僕の普通だ。 当たり前。 僕が今向かっているのは、宮本という苗字のお宅らしい。 それにしても普通じゃない。駅を出てすぐ迎えがいると行っていたけれど、その迎えは度を超えたものだった。 黒光りした車に乗せられて、1人では広い空間にいる。 「着きました」 そう考えているうちに車は止まって、開けようとした手前ドアが開いた。 「あ、御丁寧にありがとうございます……」 そっと傷つけないように車から降りてすぐ、僕は固まってしまった。 「……ここが、家、ですか…?」 「はい。どうぞお入り下さい、律様」 り、律様って…… そんなことより。 今僕の目の前に広がっているのは超大きな家。 なんかもうお城のような。 戸惑いながらもゆっくり中に入ると、そこには2人の人が立っていた。 「お、来たね」 「……はじめまして。有坂、律といいます」 深々と頭を下げてから深呼吸をして、ゆっくり顔を上げた。 「礼儀正しくて健気でいい子じゃないか。律くん、はじめまして。俺はこの家の長男の宮本 遼(ミヤモト リョウ)だよ。よろしくね………ところで本当に男の子?」 お金持ちはもっと堅苦しいものかと思っていたけれど、遼さん?は結構温厚な方のようだった。 それにしても、男の子か……? 「お、男です…」 どうやら、性別を間違えられそうになっているらしい。 「ははっ、ごめんね。あまりに可愛い顔してるからビックリしただけだよ」 このイケメンが……。自分の顔をわかって言っているのだろうか。 「あの、隣の方は……」 「あぁ、こいつ無口なんだよ。ほら自己紹介」 「……三男の小葉(ショウヨウ)。律、よろしく…」 声が小さくてなかなか聞き取れなかったけれど、多分小葉って言ったんだと思う。 「小葉さんと遼さん、宜しくお願いします」 嫌われないようにしなきゃな、と笑顔で挨拶をした。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 早速、城(家)の中に入れてもらってリビングルームとやらに着いた。 その後家の中を色々見せてもらって、1通り終わってまた戻ってきた。 「広い…凄いですね……」 迷わないように家の見取り図を絵に書いておいた。 小葉さんは途中でやる事があるから、と自室に戻った。 「疲れた?少し休もう」 遼さんが知らぬ間にお茶を出してくれて、咄嗟に頭を下げた。 「あの、聞いてもいいですか?」 「うん、いいよ」 聞きたいことがいくつかあった。 「お手伝いさんとか、いないんですか?遼さんがお茶を持ってきてくださって。こんなに広い家だし手入れとか…」 「あー。うちは基本ね、気づいたら掃除するって感じなんだ。だから隅の方は結構埃だらけだったりするよ。家政婦は兄弟が嫌だと言ってね」 こんなに大きい家の掃除を……してない…。 家政婦は……嫌…。 ……我が儘、なのだろうか。 「ご兄弟は何人なんでしょうか」 呆れ気味に聞いてみる。 長男、三男を紹介されたんだから次男がいるのは当たり前だけど、それにしては部屋の数も多くて。 「あー、うちは君を入れたら7かな」 「……え?」 「ふふ、ビックリしたでしょ。なかなか多いよね」 つまり、6人… 僕以外に6人も兄弟がいるんだ。

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