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第14話
もそもそと起き上がり、ガドはしょんぼりと肩を丸めた。
尻尾をくったりとさせて、まだ絨毯に座ったままガドを見上げている俺を見つめる。
「ここな、魔王直々の結界張ってるだろ? 次入ったらバレんよ。今日はさっき魔王が外に飛び出していったのが見えたから、忍び込んだんだ。ちょっと様子を見てそれきりの予定だったんだけど、お前とまた遊びてぇかんなァ……」
悩ましい表情の理由は、そういうことか。
たまたま遊びに来た時がアゼルの留守だったから今はここにいるが、本来は入るとバレてしまうようだ。
二度と来る予定はなかったけれど、また遊びに来たくなってしまったというわけだ。
ガドはアゼルには勝てないらしい。
狼と竜なら勝てそうだけどな。
そう言うと、ノンノンと指を横に振りながら「俺は竜にしか変身しないけど、魔王は四回の形態変化を残しているんだぜ」と言われた。なるほど、その意味はわかるとも。
「シャル、魔王が結界を解いてくれたら、俺のところに遊びに来いよ。お前なら、背中に乗せてやるぜ」
ガドは尻尾をびたんびたんと揺らした。
そして名残惜しそうにしていたものの、来た時と同じように窓からバルコニーを乗り越え、崖下へ飛び降りてしまう。
俺は驚いて反射的に窓に駆け寄るが、すぐに大きな影が窓越しに落とされた。
ところどころ魔物や魔族が飛行する空を一際大きな銀の竜は雲を割り、舞踏のように美しく舞っている。
首の長い、胴は細身の四足歩行の竜。
巨大な翼をはためかせ飛行すると、魔物たちが一目散に道をあける。
「……あれに乗ったら、さっきの比じゃないくらい酔いそうだ」
ジェットコースターのようにくるくると舞うガドをぽかんと見つめ、真剣に悩んだ俺である。二分割どころか、爆裂四散するかもしれない。
……大丈夫、勇者さんは頑丈なのだ。
半ば自分に言い聞かせて、いつもより熱心に筋トレを再開した。
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