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第20話(sideアゼル)

 それから俺は魔王城付近に住んでいる力の強い魔族を中心に、シャルを魔王城の住民、ひいては俺の所有物である旨を一週間かけて伝えてまわった。  人間に興味がないものはあっさりと従ったが、人間が大嫌いな連中は多い。  なんせ人間、めんどくさいもんだから。  俺たちが人間を喰うように人間も俺たちを討伐して素材採取に勤しんでいるから、まぁ少なからず因縁がある種族もいるんだ。  そういうやつらは、今実力行使で従わせ中。だが、俺はあんまりそういうことが好きじゃねえ。  魔王が力で従わせると、実質命令となる。それは流石に気が引けてしまう。  なので敗北者には、シャルはその種族の誰かの許可がないと縄張りへの立ち入りは禁止という書類を交して纏めることにした。  そのあたりは城が住居だから問題ねぇぜ。他のやつらにむざむざ見せびらかす気もない。  残る問題は城の中の連中だが……昨日シャルが外に出たがっていたのでそれを叶えるべく、俺は急ピッチでそいつらとタイマン中だ。  魔族はどうしても不満があればタイマン、敗者は絶対服従。だから、強い魔族は弱い魔族を庇護する。  そういう生き物だからな。  多少ハンデは与えているのだ。  そして奔走の日々である──現在。  俺はシャルの欲しがった桃をたっぷり入れたカゴを口に咥え、お散歩用の形態である小型クドラキオン状態で牢の扉の前にいた。  お散歩形態は、夜の月見散歩のために使っている姿だ。  自分の魔力と血液で作る鎌も纏っていないし、爪や牙も通常状態。魔力も隠密に押さえ込んであるので、半端な魔術師では感知もできない。  ヤバイ……俺天才すぎる……パーペキだ。  桃と動物、シャルの望みを俺だけで叶えることができるこの姿。  桃feat俺。素晴らしい。  いつもなら勢いに任せて照れくささを弾き扉を開けるのだが、この姿では扉を開けられなくて、カリカリと前足で扉の下あたりを鳴らす。するとガチャ、と扉が開く。 「…………」  内側から扉を開けたシャルは、いつもの軽装で俺をきょとんと見つめていた。  俺を見ているだけで後光が射している気がする。いや、絶対射してる。神々しい。  神々しいシャルを見ただけで、俺は機嫌よく尻尾を振ってしまった。  パッタパッタと尻尾を振る俺を見つめるシャルは、少し硬直したあと、俺が中に入れるように扉を大きく開いてくれた。  あ? なんだ? クドラキオンが珍しいのか? それもそうか。俺はかなりレアな魔物だからな!  多少間があった理由にあたりをつけ、軽やかな足取りで中に入り、いつものテーブルにカゴを置く。  そして桃調達を褒められたい俺は、扉を閉めてからゆっくりとあとに続いていたシャルに、うきうきステップで走り寄った。  ドヤ顔ひっさげて。

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