120 / 192

第120話※

 切羽詰まったお互いの呼吸、喘ぎ声、擦れるシーツ、軋むベッド。  こもった熱気が肌に纏わりついて、独特の空気が充満している。 「く……ふ、ぅ、っ……」  おかしくなりそうなほど、興奮した。  トロ、と開いた唇から唾液が漏れ、クッションにまた新しいシミを作る。  それが恥ずかしくて、シミごと布地に甘噛みして誤魔化す。 「はっ……シャル……」  ここまでたっぷりと我慢をして俺のことばかり考えていたアゼルが、強請るような甘い声で俺の名前を呼んだ。  苦しそうに乱れる呼吸。  俺の返事を待つ間さえ、甘噛みしていた項の歯型をペロペロと舌先で舐められる。  もう限界だと訴えるようにアゼルは腰を支えていた手で、張り詰め、勃起した俺の肉棒を触り、親指で鈴口を刺激して誘う。  胸の奥と腹の中がキュン、と疼いた。  初めての感覚に浸るよりも、甘えてくるアゼルが非常にかわいい。  俺にも母性とかそういうものがあったのか、心がきゅんきゅんする。胸キュンと言うやつだ。  顔の横に添えられてクッションを緩く握っているアゼルの手に、俺はぼう、と熱でとろけた頭のまま、唇を寄せる。  舌を伸ばして滑らかで白磁のような手の肌を舐め、唇で挟んでちゅうちゅうと子どものように甘噛みして、視線を背後に流した。  早く犯してくれ。  お前で蹂躙してほしいんだ。 「ふっ、シャル……ッ」 「く……っあぁ……!」  それが許可だと伝わった途端──俺の身体を抱きしめながら、中の怒張が激しく暴れだす。 「あぁ……っ! う、あっ、ぁっ」  素肌同士がぶつかり合う破裂音とともに、結合部からズチュッ、と漏れ出す、粘着質で卑猥な音。  散々に喘いだ後の頭がおかしくなりそうな責めに、かすれた声を悲鳴のように絞り出す俺が、カラクリのように連動している。 「はっ、シャルん中、熱くて、イイぜ……ッシャルももっと感じろ、俺のことだけ、感じてろ……ッ」 「う、ぐ……ッ! あぁッ、あ、アゼル、ッは、激しい……ッ」 「くそ、止められねぇんだよッ……!」  獣じみた獰猛な唸り声。  汗の一滴をも逃がさないとばかりに舐められ、襞の一つ一つをアゼルの熱が貪った。  トンットンットンッ、と速い動きで前立腺を斜め上からノックしたかと思うと、不意に奥の肉の曲がり角をドスッ、と深く穿つ。  そして抜けそうなほど腰を引かれ、鎌首の反りが前立腺をひっかく。 「ひッ、ひ……ッ!」  ビクッ、と仰け反る背骨。  限界まで勃起した屹立の先から、先走りがボタボタと壊れたように流れた。  最奥に突きこまれ、浅いところを捏ねられ、ギッギッとベッドを軋ませながらシーツの上で、俺の体はアゼルの一部になっていく。  繰り返される抽挿。背中に散る汗。  失禁したように濡れた股もシーツも気にならず、ただ揺さぶられるだけ。  それでも自分の直腸をみっしりと埋める膨満感が、気持ちよくてたまらないのだ。  けれどそう感じるのは、きっと本来の俺じゃない。ギチ……ッと内壁が、離れていく杭を引き留めようとキツく柔らかくうねった。 「あぁッ、こんなの、ッあ、俺の身体が、く、変にな、る、ッ……んッ、んんッ」 「っは、変じゃねえ、シャル、イイ……っお前の身体、気持ちいい……っ」  自分でもなにを言っているのかわからなくなりそうになりながら、回らない舌で泣きそうな嬌声をあげる。  アゼルは離すまいと甘える中の締めつけに息を詰めると、ズルリとそれを振り切って引き、角度を変えて上から突き刺すように深く埋めた。  トプッ、と蜜が吹き出す。  強すぎる。蠕動する襞が落ち着く前に、今度はゆっくりと小刻みに追い詰める律動。

ともだちにシェアしよう!