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第127話
◇ ◇ ◇
「ユリス……っこれは恥ずかしい……こ、こんなところ、アゼルに見られたら俺は……っ」
「いいから手をどけてよ……っ! 僕だってお前のやらしい体なんかお詫びじゃなければ見たくないよ馬鹿……!」
「ぅあっ」
弱々しい抵抗で胸元を隠していた腕を無理矢理開かされ、無防備な素肌があらわになった。
ユリスのアーモンド型の大きな瞳が晒された俺の肌をじっくりと映し視線が滑るのを感じて、羞恥から顔が熱くなって俯く。
胸元に散りばめられたほんのりと色づく鬱血痕。恥ずかしい。隠したい。
逃げることを許さないユリスがそれを見て険しい顔をしたが、フンッと鼻を鳴らされただけで情けなく眉が垂れた。
うう、いっそなにか言ってくれ。
ちなみになにをしているのかというと、ボディの採寸である。
魔族に拐われた時俺の一張羅が破りさられたので、合う服を貰うべく体のサイズを測られているだけだ。やましいことはなにもないが、死ぬほど恥ずかしい。
──昨日の午後。ユリスはコソコソと俺に会いにやってきた。
俺はユリスをツンケンしていても根は極悪人ではないと予想している。
突然の来訪を快く受け入れると、ユリスは「自分が意地悪をしたせいで傷を負わせてしまったからごめんなさい」という趣旨を、十分ぐらいの長さで飾り立てつつ述べてくれた。
が、むしろ自分の気がつかなかった感情を自覚できて感謝しているし、あれは俺の不注意だったので逆に謝った。
ありがとうは流石に言わなかったぞ。
自分が当て馬になったおかげで恋敵が好きな人と付き合うなんて、やっていられないと思う。
俺はユリスが嫌いじゃない。
結果的に彼を傷つけたのは、俺の胸も痛むことだ。
なのでそういう複雑な心境を全て話して「申し訳ないが諦められないのでいくらか殴られるくらいなら受けて立つ」と頬を差し出すと、思いっきりキレられた。
曰く、確かに心では気に食わないが、潔すぎて俺を罵倒するのが馬鹿らしい! そうだ。もう罵倒してるじゃないか。本人的にはノーマルらしい。
ちなみに「魔族は寝取りオッケーだよ」と言われて青ざめた俺の敗北である。
ユリスはかわいいのに逞しい。
ちなみにこのやり取りもフルで聞いていたアゼルは、一人で喜怒哀楽を駆使した百面相をしていた。うん、かわいかったな。
絶対に寝取らせないから、安心してくれ。俺はセックスももっとうまくなるように勉強しよう。
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