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第42話 ぬくもり

   部屋に着くなり俺はティルナータを横抱きにして、まっすぐに寝室へ向かった。  時刻はまだ昼下がりだというのに、昂った身体を抑えることもできなくて、俺はすぐさまティルナータの唇に食らいつき、スーツを脱ぐことも忘れ、その痩身を激しく掻き抱いた。  キスをしながらブルゾンを抜き、その下に着ていた長袖のシャツを脱がせてしまうと、頼りない身体があらわになる。  騎士であった頃のティルナータの身体は、細身ながらもしっかりとした筋肉に覆われていた。しなやかな肉体の稜線がとても美しかった。しかし今の身体は、裕正さんのいう通り、痩せすぎている。あまりに日に当たったことがないかのように肌は白く、男の肌にしてはやわらかく、陶器のように滑らかだった。  あまり身体を見られたくなかったのか、ティルナータは俺の目線から逃れるように、身をよじった。俺はその動作をすぐに封じて、か細い両手首をベッドに縫いつけた。  肌理の細かい艶やかな肌のいたるところにキスを落としていると、その度にティルナータは色っぽいため息を漏らして、恥ずかしげに目を伏せた。 「……は、っ……ん……」 「ティル……俺を見て」 「んっ……でも、僕は、こんな……」 「こんな、何?」 「昔とは、違う……から。こんな、醜い身体を、ユウマに……見られるのは」 「醜いなんて、どうして? すごくきれいだ。今も、すごくきれいだよ」 「うそ、うそだ。僕は……っ、ァん」 「ほら……こんなに感じやすくて、かわいい身体だ。あの頃と全然変わらないよ」 「んんッ……」  そこにだけ淡い色を落としたかのような、可憐な胸の尖り。白い肌にそこだけ色づくそれは、あまりにエロくてたまらなかった。俺はすぐにそこを口に含み、舌に唾液をたっぷりと絡ませながら愛撫した。するとそこは素直に硬くしこって、溢れ出る声がまたいっそう甘くなる。 「ん、んっ……ぁん」 「かわいい、ティル……」 「ま、まって……僕は、っ……」 「下も、脱いで。全部見たいんだ。ティルのこと、ぜんぶ」 「や、やだっ……見られるの、や……」  キスと乳首への愛撫でへろへろになっているティルナータから、ズボンと下着を脱がせてみると、ティルナータの性器はしっかりと勃ちあがり、とろとろといやらしい涎を滴らせていた。  淡い色をした下生えに、蜜のように絡みつく体液を指先ですくい、鈴口をゆっくりとなぞってみる。 「ひぁっ……」 「この身体を、誰かに触られるのは……はじめて?」 「う、うん……はじめて、だ」 「そっか。……嬉しいよ」 「ンっ……ゆうま、やだ、そんなに見たら、」 「なんで? きれいで、エロくて……最高だよ」  ぐっと身を乗り出してキスをしながら、ティルナータの脚を開いていく。ほっそりとした太ももを撫で上げながら、俺はティルナータの口内をゆったりと味わった。  おずおずとキスに応じる舌の動きがかわいくて、いじらしくて、たまらない。再会の喜びと相俟って、俺の身体はもう暴発寸前だった。  でも、この肉体でのセックスは初めてなのだ。優しくしたい。でも、理性なんてもうとっくに擦り切れていて、ティルナータを求める情欲ばかりが先に立つ。俺はそんな自分を必死で律しながら、ティルナータの後孔をそっと指で撫でた。 「……ゆうま……したいよ」 「俺も、したい。ここに、挿れたい……でも」 「僕は、大丈夫だから。……して欲しいんだ。ユウマのことを、もっともっと感じたい。僕はちゃんと、ユウマとともにあるんだっていうことを、感じたいんだ」 「ティル……」 「お願いだから、して……。ユウマ、挿れてくれ」  涙目でねだられて、本当にめまいがした。  愛おしい相手に、待ちわびていた恋人に求められることが幸せで、俺は冗談抜きで泣きそうになった。  健気に俺を欲しがるティルナータがかわいくて、どうにかなりそうだった。俺はスーツのジャケットを脱ぎ捨てて、ネクタイを緩めてシャツを寛げながら、ティルナータに覆いかぶさる。  さっきコンビニに寄って買ってきたジェルを手に取って、ティルナータの後孔を慣らしていく。一度、記憶の上では経験があることとはいえ、この肉体はまっさらで、幼ささえ残っている。  でも、ティルナータは思ったよりもすんなりと、俺の行為を受け入れてくれた。浅く呼吸をしながら力を抜き、目を閉じて行為に集中している。時折眉根を寄せたりまつ毛を震わせたりしつつ、俺の指を感じようとしてくれている様子があまりにもかわいい。  俺は優しくキスを降らせながら、「上手だよ」とティルナータを褒めちぎり、ゆっくりゆっくりことを運んでいった。  俺の我慢も限界だ。  ティルナータが中でも快感を得ることができるようなそぶりを見せ始めたのをいいことに、俺はするりとスラックスを脱ぎ捨てた。そして、今までに見たことがないくらいに張り詰めた怒張にゴムをつけ、ティルナータに身を寄せた。 「ごめん……もう、挿れさせて」 「いいよ……はやく、きてくれ」 「優しくできなかったら、ごめん」  指による愛撫で、ティルナータはすでにくったりととろけた顔をしていた。ゆるくペニスを勃たせながらしどけなく脚を開き、ジェルでいやらしく濡れたアナルで俺を誘うティルナータの表情はあまりに蠱惑的で、見ているだけでイキそうだ。 「あ、んっ……ァ……っ!!」 「あ……はっ……」 「ん、んっ……んぅ……っ」 「ティル……ごめん……ごめん、いきなり……っ」 「ぁ、あ、んんっ……!」  背筋が痺れるような激しい快感で、腰が砕けそうになる。ティルナータの中はとても熱くて、ひどく淫靡に蠢いていて、腰が勝手に動いてしまうほどに気持ちがよくて……。 「あ! ぁ、ん! ゆう、ま……っ、あぁ!」 「ごめ……止まんない、ごめん……っ、はぁっ……ティル……っ」 「ん、ん、ぁ、あ、ああっ、ん」 「すげ、気持ちいい……はぁっ……はっ、ごめん、こんな……」 「ゆうまぁ……っ、ア、あっ、そこ、だめ、イきそう……いきそうだからっ……」  さっき見つけたばかりのティルナータのいいところを狙って、俺はがつがつ浅ましく腰を振った。ティルナータの細い腰がびくびくと跳ね上がり、ぺったんこの白い腹にとろとろと透明な体液が滴っていく。  シーツを握りしめて身をくねらせ、眉毛をハの字にして喘いでいるティルナータを見つめながら、俺は欲望の赴くままに腰を振った。激しくぶつかり合う肌と肌からは水音が弾け、ゆさゆさと揺さぶられるティルナータの白い身体が途方もなくエロかった。 「イって……ティル。中でイくとこ、見せて……」 「ぁ、あっ、や、見たら、だめ、だめだっ……ぁ、ア、あんんッ……!!」 「見たいんだ、全部。ティルの気持ちいい顔、すっげ、かわいい」 「ぁ、ああん、んんんーーーーっ……」  細い腰を掴んで遮二無二ピストンしていると、ティルナータはぎゅっと目を瞑って身体を縮め、ぶるぶると震えながら絶頂した。中がきゅうきゅうと甘く締まり、あまりの気持ちよさに俺も思わずイキかけたが、なんとか耐えた。  だって、ここで終わるなんてありえない。もっともっと、ティルナータを気持ちよくしてやりたい。俺のことを身体でもしっかり思い出して欲しいから。 「ゆうま……ぁ、あっ、あ、そんな、っ……やめ、」  すぐにピストンを再開した俺を、ティルナータがとろとろになった眼差しで見上げている。やめろと言いたげな口調の割に、ティルナータの腰は艶かしく上下して、俺のペニスを嬉しそうに咥えこんでいる。 「これからだろ、ティル。……もっともっと、めちゃくちゃになってよ」 「ぁあっ……!! やぁんっ……ん、だめだ、やめっ……いきなり、そんなァっ……」 「ここ、可愛がるの忘れてた。乳首いじられるの、好きだもんな」 「や、やっ……だめ、やだ、ァんっ、んっ……!!」  腰を振りながら両方の乳首を愛撫してやると、ティルナータの腰の動きが激しくなる。自分から脚を開いて、俺のペニスを奥へ奥へと飲み込もうとする腰遣いがエロすぎて、俺は加減も忘れてティルナータを激しく穿った。  俺の言葉や、指使い、腰の動きのひとつひとつを感じてくれて、何度も何度も中でイって、俺から離れたくないと言わんばかりに深く咥えて……。ティルナータの素直な反応や、甘い吐息に包まれて、幸せでたまらなかった。心も体もとろとろに溶けて、ひとつになってしまいそうに濃密で集中した交わりだ。 「……はぁっ……ぁ、あっ……! ぁんっ……も、イケない……っイケない……っ」 「うそ。ティルのここ……まだ俺のこと欲しがってる。ほら……こんなにいやらしくひくついて、俺のコレ、うまそうに飲み込んでる」 「ぁ、んっ、そこ、ァ、だめ、あんっ」 「はぁっ……ティル……すげ、いい……。もっと、もっと欲しがって」 「ゆうまぁ……っ、ん、んん……ンっ……!」  もう何度目かも分からない絶頂に、ティルナータは我を失って身悶えた。正常位でティルナータを攻め立てながら、白い肌が艶かしく紅色に染まり、若い身体が快楽に堕ちてゆくさまを、うっとりと見下ろしていた。  孤独のせいで暗く冷え切っていた部屋に、熱が生まれる。  日が落ちるまでずっと、俺たちは熱に浮かされたようなセックスに溺れた。

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