薄暗い山道を、三騎の軽快な馬蹄の音が横切っていく。
十年ぶりに見る景色と、次第に急がせる馬の蹄の音は、先頭をいく男の心音と重なり、手綱を握る手にさらに力を込めさせた。
馬の主は、かすかな月明かりの下でも、整った顔立ちだと察しがつく。色白の肌、この国では稀に見る印象的な深い蒼色の瞳と髪、透明感のある雰囲気をまとい、今、一心に夜道の行く先を見つめている。その目を縁取る長いまつげの隙間には、こみ上げてくるものが時折ちらと光った。それが向かい風によるものであるのか、それとも、感情に起因するのか、切羽詰まったこの状況下では、判断できない。
夜の山道は、馬で駆けるには危険すぎる。
それでも、三騎は速度を落とさず、細い獣道を縫っていく。
男の結い髪に刺した銀の歩揺が、鞍上の動きに合わせてせわしなく揺れ、そこに映る月明かりが砕けた氷のように煌めいた。
ーーー『新月の光』前夜

