ハウルやってましたね

ツイッターみてたら懐かしくなって、昔書いたものを引っ張り出してみましたw

映画見て、うずうずして、勢いまかせに書いた二次です。

……あ、勢い任せなのは今もですけど(;^ω^)

(すみませんBLじゃないです。ハウソフィーです)

 

 

【還る場所】

 

 

 ケンカをした。
 ……ごくごく他愛もないことで。
 ケンカになった原因を思い返すとまた苛立ちがぶりかえすので、それにはあえて触れないが、――第三者からみれば笑ってしまうようなクダラナイ原因であることだけは間違いないだろう。

 『最悪だ! 信じられないよ! 諸君には思いやりってものがないのかい?!』

 例によって例のごとくこの世の終わりとばかりに癇癪をおこして喚くハウルにカチンときて、ソフィーも負けずに喚いた。

 『そんなに大切なモノだったならちゃんと一言云っておいてくれればよかったのよ! だいたいお昼すぎまで惰眠を貪っているからそんなことになるんだわ!』
 『だらしないのが僕の身上なんだ!』
 『そんなことを威張って云わないで!』

   インガリーで最も腕のたつ魔法使いは、インガリーで一番グータラな魔法使いだ。
 才能を無駄使いするのが大の得意で、小さな仕事は唯一の弟子のマルクルにまかせきり、日がな一日ソフィーの掃除やその他の家事を邪魔する呪いにかまけている。(本人に邪魔している気はないらしいが、そうとしか思えない汚し方をするのだ)

 『そんなこと?! そんなこと! ああ、ソフィー。君はそればっかりだ! 僕のやることなすこと全てが気に入らないんだね! ……もういいよ!この城の主人は僕じゃなくあんただ。もうとっくの昔にね。好きにするがいいさ!』

 そう云い捨てるなり、ハウルはばたばたと足音も荒く階段を駆け上りその姿を消した。

 二階で扉の閉まる音とかぶさるように、暖炉を陣取っているカルシファーがぼそりと『……負け犬の遠吠え』などと呟く。それに聞こえぬフリをしてソフィーはショールを手に取りすたすたと出入り口へ足をむけた。

 『好きにすればいいなら勝手にさせてもらうわ』

 ドアを開ければ、もうそこは慣れ親しんだ生家だ。

 『え? ソフィー?!』

 驚きの声をあげる面々を無視して、ソフィーはハウルの城を後にしたのだった。



*

 そして現在、彼女はゆくあてもなく『がやがや町』を彷徨っている。
 所々戦火の傷跡が色濃く残るものの、町は以前の活気を取り戻しつつあった。
 生まれ育った町が無残にも焦土と化したあの忌まわしき戦争は、両国の度重なる折衝のもとなんとか半恒久的な和平をもたらすことに成功し、終結した。
 ……もちろん、その和平は、あのカブ頭の王子様の並々ならぬ尽力があったからこそ成しえたものであるということをソフィーは充分承知していた。感謝してもしたりないくらい彼には感謝している。

 (……戦争はイヤ)

 大切なものを。
 大切な――ひとを。
 無慈悲に奪うものだから。

 思い返した戦時中の様々な出来事に軽く身を震わせ、彼女は肩にかけていたショールの端をきゅうと引き寄せた。

 『ソフィー』

 ふいに、彼の声が聞こえた気がした。
 同時にその温もりが肩から全身に広がる。

   『……ハウル? なにをしているの?』
 椅子の背にかけていたショールを手にして彼がなにごとか呟くのをたまたま階段のところから目にしたので、そう問うた。
 ハウルはまるで悪戯がみつかった子供のような顔で小さく笑うと、階段の途中で足を止めたままのソフィーに近づきそっとその肩にショールをかけた。
 『呪(まじな)いをちょっとね。……君が寒くないように』

 (君がいつでも暖かいように)



 「ハウルの馬鹿」



 そんなクダラナイことにばかり魔法を使って。
 そんな――どうでもいいことばかり。

 それでも。
 肩を包む温かさは確かに彼のもの。
 拒絶できるわけなどないし、じんわりと身体だけではなく心まで温かくなってくるから。



 ソフィーはそっと溜め息をつき、少しの間町の真ん中で足を止め逡巡すると、今度は明確な方向性をもって歩き出す。

 ……その足取りは、いつのまにか軽やかなものに変じていたが彼女自身は気づかなかった。



*

 一方城では、夕方近くになってようやく階下に姿をあらわしたハウルに、マルクルが半泣きで取りすがった。
 「ハウルさん!! どうしましょう?! ソフィーが出て行ったまま帰ってこないんです!」
 けだるげな仕草でちらりと部屋を見回し、……だが、取り立てて慌てる様子もなく暖炉に近づくと薪を一本放り込み、彼は踵をかえす。
 「カルシファー、浴室にお湯を送って」
 「ハウルさん!」
 半泣きどころか本泣きになりそうな叫びをあげるマルクルを取り成すようにカルシファーが口を挟んだ。
 「もう日も暮れる。ソフィーは意地っ張りだから帰ってきたくても城に入ってこれなくて寒さで震えているかもしれないぜ。迎えに行ってやれよ」
 口調は相変わらず偉そうだが、カルシファーはカルシファーなりに本気で心配しているようだった。
 「……ソフィーはショールを持っていったんだろ?」
 マルクルの目がなにかを思い出すように彷徨(さまよ)った。
 「確かに持っては行きましたけど……」
 「なら大丈夫だよ」
 「え? 大丈夫って…」

 「お湯、頼むよ」と言い置いてその場を立ち去る彼の背にカルシファーとマルクルの非難のこもった叫びがぶつかる。

 「ハウル!」
 「ハウルさん!」

 それを受けてハウルの口元に浮かんだのは苦笑めいた笑み。

 「心配しなくてもそのうちひょっこり帰ってくるよ」

 (あのショールには呪いがかけてあるからね)

 どこにいても彼女が寒くないように。

 (そして、どこにいてもこの城が――僕が恋しくなるように)

 


 無駄なことが大好きな彼だったが、彼女に関する限り無駄な魔法は一切使わない彼なのだった。

END

 

 

 

……こんな感じのを書いてました。これは一作目で、このあと映画から原作に移行して、けっこうな量書きました。懐かしい♪

根っからのBL好きなんですが、ハウルに関してはNLだったんですよね…(笑)

個人的にはカブ王子が好きです。健気でいい男です。カブでかかしだけど。