子育てコン優秀賞受賞 謝辞

このたびは「オフィシャル作家チャレンジコンテスト ~子育て・子持ち短編BL~」におきまして、優秀賞をいただき、まことにありがとうございます。

 

前回の時代物コンテスト、前々回の学園物コンテストに続き、3つ目の受賞作品となりました。コンテストが目的でお話を書いているわけではありませんが、試験がなければテスト勉強をしないタイプの私ですので、やはり受賞はひとつの目標ではあります。こうして賞をいただくと励みにも張り合いにもなります。

 

今回のテーマは「子育て」ということでした。
私、地雷はほぼないほうですが、「こどもがかわいそうな目に遭う話」と「過度なスカトロ」のふたつだけはどうにも苦手なのです。ですから、私が作品内で「こども」を描くなら、ひたすら「幸せなこども」にしたいと思いました。

 

主人公は、カップルであるところの永と敦士ではなく、敦士の父親である大槻巌57歳です。彼はゲイではありませんし、妻を愛し、息子を愛するだけの、ただのおじさんです。そんなおじさんが、ある日突然赤ん坊になるという素っ頓狂な話ですが、とにかく読んだ人がクスッとして、少し幸せになれるような、そんな話を目指しました。

 

この話に出てくる「こども」は、この「赤ん坊」になった巌と、その「息子」である敦士です。敦士の同性の恋人である永もまた、巌や敦士と縁の深い寺の「次男坊」であり、登場はしませんが、保育園で働く永の周りにはたくさんの「園児たち」が日常的にいます。保育園はインターナショナルな園で、おそらくは言葉や肌の色や生活習慣もバラバラなこどもたちが多くいます。そのすべてのこどもたちが幸せであるように、と思いながら書きました。そして、どんな人も、必ず「誰かのこども」です。ですから、この話は、すべての人が幸せであるように、という願いを込めた作品でもあります。

 

前回の受賞作品「bone」では、子を成すことができない故に、苦しみ、葛藤する様を書きましたが、「BABY,DON'T CRY.」は「bone」へのひとつのアンサーです。「bone」でファイが最後に語る「もっと先の子ら」が、敦士であり永です。

 

なお、「巌」の名前は、7月に亡くなった桂歌丸師匠の本名「椎名 巌」にあやかってつけました。公開時ではご存命だった師匠が、今はもう極楽浄土へ旅立たれているというのも感慨深いものがあります。人の命は永遠ではなく、だからこそ美しかったりします。寺の息子の「永」の名は、ちょっぴりそんな思いをこめています。ちなみに「敦士」に関しては、「舌足らずな発音をした時におもしろくなる音」というところから考え、漢字は某漫画家さんの名前を少しひねってあてました。

 

この作品に関わった全ての方々に最大限の感謝を贈ります。

 

ありがとうございました。