【イラストSS】邑崎恵人40歳のBirthday
音の外れた鼻歌が聞こえ、彼が帰って来たのだと知って期待に身を戦慄かせていると、ドアが開いた。
「お待たせ」
低い囁くような声。部屋は薄暗く、ドアの向こうの灯りを背にした男の表情はうかがえないが、機嫌が良いと分かる。
「……ぉか……ぇっ」
けれどまともに応《いら》えすら出来ない。彼に命じられた通りにしているからだ。
「あ~あホント淫乱だよね、いい年してこんなビンビンにしちゃって。バイブ美味しい?」
彼はパーティー帰りらしいフォーマルないでたちのままだった。いつもなら常に随伴する恵人は、命じられ、一人ここにいたのだ。
今日はパーティーへの同席は不要、その代わり命じられたこと。
『首輪を装着して』
『バイブを挿入してブンブン動かして』
『けして横たわらずにベッドの横で犬のように』
待っているように。
その命を受けただけで身体の奥底に疼くような熱が産まれ、無自覚に目を潤ませつつ、「かしこまりました」と受諾した。
そしてこの部屋へ戻り、身体を清めて、命じられた通り自ら首輪をつけた。
これはいつも飼い主につけられる。それにより自分が惨めな犬だと自覚させられるのだが、これを自ら装着するのは常よりさらに自らの愚劣さを浮き彫りにした。
自分は自ら進んで犬となる。そんな淫猥な生き物でしかないのだ、と。
そしてリアルに男根を模したバイブに、たっぷりとローションを纏わせ後口に押し込む。命じられた通りスイッチを入れるとそれは淫らな穴をかき回した。豪奢な内装のホテルの寝室。寝心地の良いベッドの傍らで、奥を犯す人工物では物足りなく、更なる悦を求めて自らグリグリと動かした。
彼が戻ってきたら、言いつけを守っていたなら、褒めてくれるだろうか。もっと強い快楽を与えてくれるだろうか。そんな想像をしながら自分で乳首を弄り、陰茎を擦って、すでに何度となく気をやりながら、それでも声を押し殺そうと努力する。
蠢く人工物に犯され続け、ひとり苛まれる時間の中で、恵人はふと、今日が自分の誕生日なのだったと気づいた。
今日で40歳。不惑を迎えたというのに。
汗みずくの全裸でバイブを銜え込んだ浅ましい姿。声を抑えつつも自らバイブを操作し、更なる悦楽を求め、淫らな身体は既に何度か達していて、それでも満足せずに、エサを待つ犬のように飼い主を待ち焦がれていた。
ああ、自分はこんなにも淫らで下劣だ、と自らを責めながら立ち続けるのはとうに限界であった。
「うん、一応立ってはいるね。ていうか一部勃ちすぎだけど」
ククッと笑う支配者の低い声。
そうだ、すぐそこにあるベッドへ横たわるなど許されていない。だから膝が崩れてもなにかに縋ることはしなかった。床に手を突きつつも、横たわってはいない。
「乳首もビンビンだねえ。自分で弄った?」
必死に顔を上げ、コクコクと頷く。彼から与えられるモノへの期待で、全身の血流が激しくなっている。
すると彼の骨張った手が顎から頬を覆うように掴み、強制的に身を起こさせられる。
「偉い偉い、頑張ったね。じゃあ、ご褒美欲しい?」
必死に頷きを返すと、白髪の目立つようになった髪を掴まれ、顔を上向かせられる。
目の前で、メガネをかけた美しい支配者が嬉しそうに笑んでいた。
「OK。じっくり虐めてあげる。ハッピーバースデイ恵人」
※ムーンライトノベルズで書いた『A fatal malady~不治の病~ 』主人公の恵人さん(ドM)が誕生日だったので、お祝いSSとイラスト書いてみたという。
そのうち改稿を加えてこちらにもUPしたいなあと思いつつ、今書いてる奴先にやれよ!という話なので、先の話ですが……^^