いい夫婦の日(【J.O.A.T】編)

 何でも屋J.O.A.Tの事務所に、須藤が仕事の合間に佑月に逢いに来た。同棲しているのにも関わらず、相変わらず暇を見つけると須藤は直ぐに会いに来る。

 そんな2人を見て紅一点の花が嬉しいそうに「今日はいい夫婦の日なんですよ!」と言う。

 

 須藤に一応花の声が届いたようで、佑月に「何だ?」と訊ねてくる。花に訊けばいいのに、須藤という男は〝他人〟に歩み寄る事は絶対にしない。故に未だに【J.O.A.T】メンバーとのコミュニケーションは取れていない。いや、取ろうとしないと言った方がいい。その反動なのか、一度自身の懐に入れた者には面倒見がいいところがある。佑月に関しては執着心が凄まじいが……。

 

「語呂合わせだよ。ほら今日は11月22日。いい夫婦って読めるだろ?」

「あぁ……なるほどな。夫婦ね」

 

 何か急にやらしい顔になる須藤に、佑月は嫌な予感に眉を寄せる。

 

「……なに?」

「結婚するか?」

「は……」

 

 佑月がポカンとする中、事務所にいる陸斗、海斗、花らの顔が赤くなっていく。その空気に我に返った佑月は、あまりの羞恥に自身の顔も真っ赤となった。

 

「バ、バカ! なに言ってるんだよ! しかも日本では結婚出来ないのは知ってるだろ。あるのはパートナーシップ制度で……」

「なら出来る国に行けばいい。フランスがいいか? それともアメリカか? 好きな国を言え」

「いやいや、結婚なんてしないからな」

「なんでだ」

「なんでって……あんたが旦那とか大変──」

 

 自分で旦那などと言ってしまい、佑月の顔が火を噴きそうになった。ハッと須藤の顔を見れば案の定、須藤の顔がいつも以上にニヤついていた。

 

「さっそく子作りでもしに行くか」

「うわ……なにエロ親父みたいなこと言ってんだよ」

 

 須藤がナチュラルに佑月の肩を抱き、扉へ向かおうとする。もちろん佑月は足を踏ん張り抵抗する。

 

「親父じゃない。旦那だ」

「……」

 

 反論したかったがこれ以上佑月が口を開けば、須藤がとんでもないことを口にすることが目に見えていたため、佑月は須藤を睨みながら唇をグッと噛み締め耐えたのだった。

 

 そんな中で、花だけは異様に興奮したように嬉しげであった──。

 

END

 

 

※本編との時系列はないので独立の短編として読んで頂けると嬉しいです(笑)