11月

もう11月も終わりが近付いて来ました。

やっと冬が来るのかな、と頭も身体も理解して来たようです。まだわたしのタンスの中は夏仕様。

いつ衣替えをしたら良いのかずっとわからないまま11月も終わりそうです。仕事には半袖で行っていますから夏仕様のままでも差し障りないのです。

 

先週の土曜日に『ボヘミアンラプソディー』を観て来ました。それ程Queenに詳しくはありませんがこの映画は観よう!とかなり前から決めていました。

詳しくは書きませんが素晴らしい映画でした。

最後の方は涙が止まらずエンドクレジットまでずっと涙を拭き続けた位。

今日はフレディ・マーキュリーさんの命日だそうです。彼が亡くなった日、わたしは留学先で当時付き合っていた彼とそのニュースを見て街中をワンワン泣きながら歩いたのを覚えています。亡くなる少し前にタブロイド紙に痩せ細ったフレディの写真が載ったのを見た時のショックも忘れません。

フレディとは関係無いのですが、わたしには11月は少し特別な月。少しだけ不安定になってしまう月でもあります。もう本当に昔になってしまいましたが留学していた若かりし頃ゲイの友達がいました。

名前はナム。タイ語で水という意味だと教えてくれました。南田洋子さんみたいな髪型をしたオシャレな男子でした。本当に仲良しで一緒に旅行したり家に泊まったり。同じベッドで寝ても何もある訳もなく何でも話せる親友でした。彼はお父さんの友達の家に住んでいて、わたしはそのお父さんの友達という人からも凄く良くして頂き彼の経営していたアメリカンディスカウントショップにも入り浸りでした。ナムは自分の事をバタフライだと言い、毎晩違う相手を求めて彷徨っていました。よくベッドの中から電話して来て勉強に追われていたわたしに生々しい話をして来る困ったちゃんでした。

週末には国営のLGBTの方々が集まるカフェやゲイのクラブに連れて行かれました。クラスのブラジル人の男性から感じ悪くされて悩んでいた時、彼が実はゲイでナム狙いであると知り、わたしに嫉妬するのは無意味だと彼に話して口をきいて貰えるようになった事もありました。

少し疎遠になった時期があり、その間にわたしには別の友達が出来慌ただしい毎日を送っていたのですが、ある時学校が終わり外に出るとナムが待っていました。凄く久し振りに会った彼はハグをして会いたかったと言って強く抱きしめて来ました。何だか様子が変でしたが少しだけ立ち話をして、当時酷い失恋をしたわたしがまた笑えている事にナムはホッとした顔をしてまたね、と手を振り去って行きました。その日の夜、彼のお父さんの友達からわたしに電話がありました。ナムを探している、知らないか?と訊かれたのです。わたしはナムに会った事を話しました。様子が変なので何があったのか訊くとナムがHIV陽性でショックを受けて姿を消したと言う事でした。その後わたしは知りました。実はナムと一緒に暮らしていた男性はタイからナムを買って来た男性で、ナムを愛していた為彼を放任していた事。ナムはわたしに自分が買われて来たと知られたくなかった事。わたしだけが彼が唯一心を許した本当に大切な親友で、だから黙っていて欲しいと周囲に話していた事。涙が止まりませんでした。

そんな事で彼を違う目で見たりしなかったのにそれを話せなかったナムの事を想い泣きました。

ナムは姿を消しました。誰も彼の行方を知りません。

11月1日はナムの誕生日。いつもこの時期は彼を思い出して切なくなるのです。

ファーレンハイトの香りが何処からか風に乗ってやって来るとナムを思い出します。

どこかで生きていてくれたら良いです。お互い老いたけれど会いたいなぁ。