「同年輩」から。小話

嬉しいコメントを頂いたので、短いですが続きのようなのを書いてみました。

 

「同年輩」

https://fujossy.jp/books/3495

 

「同年輩・続編」

 

 結局、あの後、もう一回してしまった。

 身体がだるく、腰と尻が痛い。

 キッチンのテーブルに座りパンを食べている男は、同じ年なのに元気がよい。

 心なしか、肌艶さえ良く感じる。

 食事をするのも億劫、だらりと椅子に座り、目の前の男にジト目を向ける。

「なんだよぉ、勝手にパン食うなって?」

「馬鹿野郎。お前のせいで怠いんだけど」

「あ……」

 その言葉に、デレッとした表情を浮かべた。

「だってさ、結局、お前が俺のことを離してくれなかったじゃん」

「なっ」

 昨日のことを思いだし、顔が熱くなる。

 そう、筋肉痛になると恨みごとをいい、もう一回と言われ、拒否したにも関わらずだ。

 結局、身体を繋げれば、体力が奪われてくたくたでも、明日、筋肉痛になろうとも、やっと愛しい男と結ばれたのだ。求められれば嬉しいし幸せだ。

 手で顔を隠していると、椅子を引く音が聞こえ、手の甲に柔らかい物が触れた。

 手と手の隙間から除けば、近くに田中の顔がある。

「俺は幸せモンだよな。こんな可愛い奥さんを貰ったんだもの」
「はぁ!? おま、何を」
 顔を覆ていた手を離して立ち上がると、腰に田中の手が回り、引き寄せられた。

「一生、大切にする」

 まっすぐに見つめられ、山本は目を見開いた。

 胸の鼓動が早い。足から力が抜け、田中が慌てて椅子に座らせてくれた。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃない。お前が、朝っぱらからそんなことを言うから」

 目元がじわりと熱くなる。

 歳をとったせいだろうか、目からこぼれ落ちたしずくに、田中が驚いてあたふたとしはじめた。

「わわ、ごめん」

 抱きしめられて、山本はその背に腕を回した。

「定年になったら、縁側で日向ぼっこをしながら、庭で花壇や盆栽を弄る俺を見るんだったよな」

「そうだ」

 額がくっつき、そして優しいキスをひとつ。

 山本の目からは止まることなく雫が落ちて、田中の指がそれを拭う。

「はは、付き合いが長いのに、お前の泣いている姿、はじめてみた」

「そうだろうよ。自分でも泣いてることにビックリだわ」

 ぐりぐりと少し乱暴に涙を拭きとられ、ぎゅっと両頬を手で挟まれる。

「田中ぁ」

「俺には見せないようにってしてたんだろ?」

 そうだ。強がって、田中の前では弱い自分は見せなかった。

「これからは色んなお前を見せよや。俺も、我慢しない」

 と尻を撫でられた。

 せっかく、ジンときていたのに、それが全て台無しにする。

「この、助平ジジイ」

 本日二度目のセリフを吐き、手の甲をつねれば、痛いと言いながらも口元が笑っている。

「俺が助平ジジイなら、お前はむっつり助平ジジイな」

「はぁ、なんだそれは」

 あはははと楽しそうに笑いながら田中が離れる。

 全く、子供みたいなやつだ。

 毎日、こんなやりとりをしながら過ごしていくと思うと……。

「山本、その顔、やばいから」

 と田中がスマートフォンで写真を撮る。

 画面の中の山本は、目を細め幸せそうな顔で微笑んでいた。

 

 

<了>

 

 

すみません、こんな続きで。

再び、ほのぼのな二人の話を書けて楽しかったです。

これからも子供のようにふざけあって、楽しく暮らしていくと思います。

夜は、山本が可愛くおねだりとかしていそう。

で、次の日、死にそうな顔をして、エナジードリンクを飲んでいるんですよ。