用語解説 ウェストコート

ウェストコート(Waistcoat)は、いわばベストのことです。
ジレ(フランス語)なんて言ったりも。
現在は、男性用スリーピーススーツのジャケットインに着ることが多いようです。
19世紀のヨーロッパでウェストコートは正装・礼装に欠かせないアイテムでした。
フロック・コート、モーニング・コートのインには必ず着ます。
夜の正装で最も格式の高いテイルコートのインにも必須。

 

伝統的に、ウェストコート着用時にはベルトを使わずサスペンダーでズボンを吊ります。
前を留めるボタンの数は様々だったようです。
形はほとんどシングルではないかと思いますが、現在はダブルもたまに見かけますね。

 

19世紀当時、すべて同じ生地で仕立てるスリーピースのスーツはヴァカンスなどで着る遊び着でした。
フロック・コートやモーニング・コートは、ウェストコートとパンツ(ズボン)を同じ生地で仕立て、ジャケットは違う生地で仕立てる(あるいはすべて違う生地で仕立てる)ことがほとんどです。
たとえば、ジャケットが黒無地ならウェストコートとパンツはダークグレイに白いピンストライプといった感じに。
ヴィクトリア期の男性服飾はたいへん地味です。禁欲的と言ってもいい。
ジャケットの色はほぼ黒かダークグレイで、色付きを街中で着るのは甚だ下品と思われていたとか。
唯一、色を楽しめたのは襟元のファッションだそうで。

ヴィクトリア期はクラヴァットからネクタイへ流行が移った頃ではないでしょうか。
ちなみに靴も男性はほとんど黒。19世紀初頭~半ばぐらいまではロングブーツ、半ば~末期まではショートかアンクルブーツ(レースアップが多い)が主流で、これは男性も女性も同じです。
バッスルドレスやフロック・コートの足元が編み上げブーツって何だかすごく素敵じゃないですか?

 

18世紀ロココの華やかな服飾もいいですが、わたしはヴィクトリア期のストイックで気品あるファッションが大好きです。

 

フロック・コートとモーニング・コートの違い、テイルコートとタキシードの違いについてもいずれは記事にできたらと思っております。