【純血の花】より。ある朝のふたり。(125ページまでのネタバレ含む。※知りたくない方は見ないでネ)

 ルジャウダ王との会合を終えたアマデウスはライオネルと共に大広間にいた。

 

 ルジャウダ王とニヴィア王妃はすでに立ち去った後だ。侍女たちは掃除に取り掛かろうとしている。

 

「ライオネル様、今朝も凛々しいですね」

「ルジャウダ王とは違った落ち着きがあって……。ああ、素敵……」

 

 通り過ぎて行く侍女たちの頬は朱に染まっている。彼女たちはライオネルにうっとりと目を奪われていた。

 

 

 侍女たちの笑い合う声音がアマデウスの思考を真っ白に染めていくーー。

 

「っつ!」

 

 冗談じゃない!

 取られてたまるか!

 アマデウスはライオネルへと手を伸ばし、薄い唇に噛み付くように口づけを落とした。

 

 ライオネルはほんの一瞬動きを止める。しかしそれも束の間だった。アマデウスの華奢な腰を引き寄せると小広間へと促す。

 

 テーブルの上に押し倒された。

 

「ライオネル!?」

 

 驚きを隠せないアマデウスは、上に乗っている凛々しいその双眸を見上げる。

 

 ブルームーンの目に光はない。貪欲にアマデウスを求めていた。

 

「あのっ!」

 

 すぐ前の大広間では侍女たちがいそいそと慌ただしく掃除に取り掛かっている。しかも今は日中で、少し視線を外に向ければ明るい視界が広がる。小鳥が囀り羽ばたき、蝶が舞う。

 

 それなのにーー。

 狼狽えるアマデウスを尻目に、骨張った大きな手が臀部をなぞる。

 

「誘惑してきた君が悪い」

 

 言うなりアマデウスの鎖骨に唇が落ちてくる。

 

 彼は活力吸血鬼(ヴィガー・ヴァンパイア)だ。だから淫魔の自分が傍に居て空腹を満たしたいだけーー。ただそれだけだ。

 それなのに……。

 

(抗えない)

 

 アマデウスが抵抗を諦めるとほぼ同時に薄い唇が落ちてくる。赤い唇から放たれる甘い吐息ごと塞いだ。

 

 アマデウスは自ら下肢を開き、彼を招き入れる。

 

(ぼくは……心も身体もーーすべて貴方のものだ……)

 

 アマデウスは従順にその身体をライオネルに差し出した。

 

 隣の大広間では侍女たちが慌ただしく動き回る気配がある。

 

 聞こえるのは食器が重なる音と可愛らしい小鳥たちの可愛らしい囀り。 

 小広間には甘い嬌声が響いていた。