累計リアクション300over感謝SS
いつも閲覧ありがとうございます。
この度、現在連載中の小説『ラブ、大盛つゆだくで』
https://fujossy.jp/books/17547 (※R18)
の累計リアクションが
なんと、300を超えました!
感謝感激でございます!ありがたや〜!
たくさんのご反応をいただけて、本当に嬉しいです。
このめでたい節目を期に、皆さんへの感謝の気持ちを込めて
『ラブだく』SSをこちらに投稿させていただこうと思います。
SS…と言うには、少し長い…かもしれませんが。
私にとっては短い方なので、良しとします?
※比較的健全ですが、一応18歳以下の方は閲覧ご注意ください。
それでは、どうぞ。(唐突に始めます)
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シャアアア。
外で車が水溜りを踏みつける音がして、牧は今日の天気も雨だということを知る。
梅雨入りしてからというもの、ここのところずっと雨ばかりだ。
スマホを掴んで天気予報を開いてみると、週間天気予報はすべて傘マークがずらりと並んでいた。
日曜と月曜には曇りのち雨だとか、雨ときどき曇りとか、かろうじて雲マークが顔を見せるが。
今日の火曜日から土曜日に至っては完全に傘×5と、きれいに揃っている始末だ。
「ポーカーだったら、フラッシュなんだけどなぁ」
溜め息をつく牧を見て、グラスを2つ手に持った鳴海がくすりと笑って。
「どうしたの、牧さん。浮かない顔して」
テーブルに、オレンジジュースの入ったグラスをコトンと置く。
好物を目の前にして、牧が視線をテーブルへと動かすと、ジュースと同じ色をした艶のある髪がさらりと揺れた。
しかし、すぐに機嫌を損ねていた原因を思い出すと、その血色の良い唇を尖らせた。
「だってさ。最近、雨ばかりでさ。つまんねーじゃん」
「まぁ、梅雨ですからね……」
日本にいれば避けることのできない季節ではある。
いやいや、そんな当たり前の話をしたいわけではなくて。
「てか。鳴海は梅雨、嫌じゃないの?」
「好きか嫌いかで言うなら、嫌いだけど」
「え、そうなの?」
鳴海の口から『嫌い』というマイナスな言葉が出てきたことに、牧は素直に驚く。
普段、『好き』という言葉しか聞かないから、どうにも聞き慣れない。
「湿気で、くせ毛のうねりは酷くなるので。生まれてこの方、雨の日が好きだったことないかな」
そうだった。あまりにも格好いいパーマなものだからつい忘れがちになるが、実は鳴海は天パだったりする。
本人はコンプレックスのようで気にしているらしいが、牧は案外そのふわふわヘアが好きだった。
今日も朝から髪が爆発していたとかでブルーになっていたみたいだが、洗面所を出てくるとそんな片鱗すらなくなっていた。
さすが、現役の美容師である。
牧は別に家にいるときくらいそんなの気にしなくてもいいと言ったのだが、鳴海は恋人の前では少しでも格好をつけたいとのことだった。
「でも、最近は雨の日も悪くないかなって思ってる」
「へぇ、なんで?」
牧が素朴な疑問を投げかけると、鳴海はにっこり微笑んで。
「休日の朝から、こうして堂々と牧さんとイチャイチャできるしね」
そう言うと、鳴海はベッドの上の牧へと覆い被さった。
まだ服を着ていない、裸でいる牧の素肌へと、優しいキスを落としていく。
「んっ……。昨夜もしたばかりなのに、またするの?」
「牧さんは、したくない?」
「…………したい」
それだけ返すと、牧は細長い足を鳴海の体に絡みつける。
二人の熱い吐息で、部屋の湿度が更に上がっていく。
雨音のノイズは、いつの間にか淫靡な嬌声にかき消され。
窓の外では青い紫陽花が、静かにその花と葉を濡らす。
テーブルの上に置き去りにされた、冷たいオレンジジュースの入ったグラスは結露して。
透明なガラスの表面に、雨粒のような雫を降らせていた。