送る花の香の中(本編補足文章パート)

 

祖母に最期のお別れで棺に花を入れた
上司は祖母の顔の周りに美しいピンクの百合を置いた
そして祖母に顔を寄せ、何か話しかけているようだったが聞こえなかった…
いつか聞いてみたい

貴方は僕の祖母に何をいったのですか…?

荼毘の後の祖母のお骨はところどころ散らばっていて
想像していた横たわったまんまの遺骨姿とは随分違った

祖母をかたちどっていた肉体はすっかり失われて
白い欠片になっていて

もう本当にいないんだなって

とても寂しかった

斎場の人が遺骨の部位の説明をしながら
骨壺に祖母だったものを入れていく

遺骨は小さな骨壺に少しだけ入れてもらう事にしたから
骨は更に小さく割られて納められていく

パサパサと砕かれ軽くなった祖母を
祖父はどんな気持ちで見届けているのか
考えただけで胸が締め付けられる

愛する妻との最後の会話は多分ほとんど僕への罵りばかりだったはずだ
僕のせいで祖母は壊れた

祖父から妻を奪った

本当なら

僕がここで砕かれるべきだったのではと

 


『頭のお骨、お花の色が移ってピンクになってますね…家族にもらったお花を確かに受け取られたようです』


遺骨の置かれた台がまだ熱を持っていて近寄ると顔が火照る
上司が祖母の顔の横に置いた花の色が遺骨に移り焼けたとは思えない
鮮やかなピンクに染まっていた

上司の置いた花…


本当に祖母に届いたような気がして

参列する事すらためらっていたこの場所で
誰よりも僕が救われていた


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上司が意図していたわけではありませんが、
ピンクの百合の花言葉は『虚栄心』

『あなたが孫より優先した世間体を守る行為は、果たして正しかったのでしょうか?』

と、死者に鞭打つ意味合いが含まれています。
悼む気持ちはありますが、一言いわせて…みたいな意味です。