年末のご挨拶と「明日に捧ぐ君への約束」 小話

 

 

 少し早めですが、年末の挨拶をさせていただきます。

 一年間ありがとうございました。

 

 今年はコロナウイルスもあり、私の周りは漠然とした閉塞感に包まれていたように感じます。

 

 そんな中、fujossy様に新たな活動の場を提供していただけた事、深く感謝しています。

 

 登録したのが昨年の11月、オフィシャル作家になったのが今年の1月6日でした。はじめは不安もありましたが、読者の皆様はとても温かく、振り返るとプレッシャーも無く楽しい活動ができました。

 

 いつもリアクションやコメント、しおりやお気に入り、レビューやファン登録など、本当にありがとうございます。

 また、サイトに登録せずに読んでいる人もありがとうございます。

 励みになっています。

 

 最近はなかなか更新ができなくて、楽しみにして頂いている読者様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。そんな中でも閲覧が増えていて、ありがたいと思う毎日です。

 

 過去のブログにも書きましたが、来年1月下旬~2月上旬くらいに活動を再開したいと思っていますので、応援していただけたら嬉しいです。

 

 今年もあとわずかになりました。

 

 皆様、お体に気をつけて、素敵な年末年始をお迎えください。

 

 この下に「明日に捧ぐ~」の小話を置きます。

 かなり昔(なんと10年前)に書いたお話です。  

 今よりもさらに下手な文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

 

 

 小此木雪花より

 

 

 

 

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(小話)

 

※明日に捧ぐ君への約束の後日談です※

 

 

 

 


【大晦日】

 


「う……うぅ……」


 聞こえてきた小さな呻き。
 それに気づいて目を覚まし、腕の中で眠る日向の頬へ浩也はそっと触れた。

 

(また、うなされているのか?)


 額にうっすらと汗を浮かべ、長い睫毛を震わせながら、苦しそうな声を漏らす日向の様子が心配だ。軽く揺らしてみるけど、案外眠りが深いらしく、起きる気配はまるでない。


「ヒナ?」


「やっ、助け……こうちゃん」


 日向の体が強張って、閉じられている瞼の端から涙が一筋零れ落ちる。


「ヒナ、起きろ」


 いつもより酷いうなされように、焦った浩也が更に体を強く揺らせば、覚醒が近づいたのか? 薄く瞳を開くけれれど、瞼が細かく痙攣し、震えはじめた体と共に歯がカチカチと鳴りだした。


「大丈夫か?」


 どう見ても、平気そうでは無いけれど、他に言葉も浮かばない。浩也がそう声を掛ければ、何とかして笑おうとする日向の様子がいじらしい。


 心へ負わせてしまった傷が、こうして垣間見える時、いつも浩也は罪の重さを改めて思い知る。


 日向が自分を思いやり、普段は全くそういう面を見せはしないから尚更に。


「キス……するよ」


 内緒話をするみたいに耳元へそっと告げるけれど、上手く口が動かせないのか? それに答える声は無い。だけど、小さくコクリと頷いたのは分かったから、浩也は安堵に息をついた。


「ん……」


 顎を掴んで上向かせ、そっと唇に口づける。


「うっ……ふぅ」


 歯を噛み締めて緊張している日向の心を解すように、丁寧に舌で歯列をなぞり、優しく背中を撫でていると、暫しの後、徐々に強ばりが解けていく。


「う……ふぅ……ん」


 言葉を使って伝えるより、こうして直接触れ合う方が、日向に伝わるような気がした。もちろん、きちんと言葉にしなければ、分からない事もあるけれど。


「んっ、こうちゃ……」


 あまりがっつかないように、唇を少し離してから、そっと背中を抱きしめると、甘えたように自分を呼ぶ日向の声が愛おしい。


 許す勇気と謝る勇気……前者の方が浩也にとってはずっと難しく思えるが、日向は決して彼を傷つけた浩也や他人を恨まない。


 夢に見るほど怖い過去すら、小さな体で抱え込み、時折酷くうなされても……次の日には、優しい笑みをこちらに向けてくれるのだ。


 無理をしての行為じゃないと分かるから、尚更浩也は切なくなる。


 自分を赦し、その上好きだと言ってくれる優しい日向に、彼より大きな愛を返そうと浩也は常に思っていた。

 

「早いからまだ寝てろ」


 頬に軽くキスをして、髪を優しく梳いてやると……擽ったそうに首を竦め、眠たげに目を擦りながら、
「こうちゃんは?」
と掠れた声で聞いてくる。


「俺も少し寝る。次起きたら、一緒に蕎麦でも買いに行こう」


 耳元でそう囁くと、ホッとしたように息を吐き、よほど眠たかったのだろう、頷きながら日向はスッと瞼を閉じた。


 静かな寝息を聞きながら、日向が悪夢を見ないようにと心の中で浩也は祈る。

 今の自分を一年前の自分が見たら、きっとびっくりするだろう。


 こんな気持ちになれたのは、日向に出会い、沢山の事を彼に教えられたからーー。


「ありがとう。愛してる」


 囁いた愛の告白が、夢の中にまで届いたのか? 腕の中で日向がふわりと微笑んだ。

 

 

 今日は一年最後の日。

 


 来年も、再来年も、ずっと一緒にいられるようにと願いを込め、浩也は日向の額へ軽く触れるだけのキスをした。

 


end