アナタがスキ。「仙蔵、茶虎を可愛がる。」より。

他サイトさんで執筆している規定がふじょっしーさんよりかなり厳しめで。

いやぁ、本当にふじょっしーさんは思いついたまま、気ままに書けるのでとてもありがたいです(*^人^*)。

そちらでも公開している、「アナタがスキ」ですが、性的描写をちょっと緩めに書いてます。

そしたら、我ながらけっこう良い感じになったかな? と思ったので、いつも応援してくださっているふじょっしーさんのフォロワー様にもお裾分けです(*^_^*)。

 

 お楽しみ頂けるなら嬉しいです。

 ということで、書き綴りましたのでご興味がある方はどうぞご覧くださいませ(*^_^*)。

 ちょっと長いです。

 

↓  ↓  ↓

 

 

 


 茶虎を襲った奴らは狸組。
 名前のとおり、俺たちの社会じゃあ、かなり貧弱な組で有名な下っ端だ。
 あの組を潰すのは造作もない。

 そんなことはどうでもいい。
 とにかく今は茶虎が心配だった。

 帰宅してからというもの、俺の顔色を窺うばかりで口も利いてくれねぇ。

 電気を煌々と点けた明るい寝室にいるってぇのに茶虎の顔がよく見えねぇ。

「茶虎? 何かされたか?」

 訊ねてみても、
「……なに、も」
 俺にしがみついたまま俯くばかりだ。

 ……シン。
 静かな空間に沈黙が続く。

 さて、どうしたものか……。
 考え倦(あぐ)ねていると――。

「……仙蔵さん、は……」
 どれくらい過ぎただろうか。
 茶虎の頭を撫で続ける中、ふいに茶虎が口を開いた。
「どうした?」

「オレの、このカッコに引いた?」

「?」
 さて、茶虎は何を言っただろう。

 はじめは茶虎の意図している内容がわからず、黙ったままでいると、茶虎はまた、ぽつりと話しはじめた。


「オレ、小太朗が川に身投げしようとしてたのを見つけて、三毛と一緒に助けたんだ」

「……ああ」
 そうだったな。
 内容は小太朗本人から聞いている。
 茶虎と三毛の様子がどうもおかしいから尾行した。
 心優しい三毛と茶虎は小太朗を助けるためにカメラの被写体の前に立っていることも聞いた。
 なんでも契約していたモデルに金を持ち逃げされたとかなんとか……。
 小太朗って奴はなかなかの小物だ。
 悪く言えば間抜け。
 よく言えば、人が好いんだろう。
 そんなだから、茶虎と三毛は放っておけなかったんだろうな。

 たしかに、女装のモデルなんて言いたくねぇだろうし。
 本人たちが明らかに隠したがっているから知らん振りしていたが――。

「オレ、オレ。まさかこんなカッコ、するとは思ってもいなくて……」
「ああ」
 まぁ、そうだろうな。
 人助けのつもりで引き受けたモデルの仕事に女装なんてあるもんじゃない。


 しかし、なかなか可愛いじゃねぇか。
 目尻がつり上がった気の強そうな茶虎は黒髪も似合っている。
 赤い口紅がさらに小さな唇を引き立たせている。
 ますます美人だ。

「仙蔵さん、は――」

「?」
 そこまで言うと、茶虎はまた黙った。

「どうした?」
「軽蔑、した?」

 軽蔑?
「どうしてだね? 似合ってるじゃないか?」
 惚れた弱みという奴なのか。
 茶虎はどんな格好をしていても似合っていると思う。

 俺が訊ねると、茶虎は、「え?」と顔を上げた。


 ようやく俺を見てくれたことに内心ほっとした。

 まさかとは思うが、茶虎は女装した姿を見られて嫌われたと思ったのか?

「茶虎? その姿もなかなか可愛いと思うぜ?」
「可愛い?」

 そう。
 初めて撮影現場に居合わせた時、メイド服を着ていた。
 あの服も、カメラの店主から無理矢理金で買い占めて茶虎コレクション部屋に仕舞ってある。

 ぱち、ぱち。
 俺が言った言葉が受け入れられないのか、茶虎は何度も瞬きを繰り返す。

 こんな茶虎も可愛い。

「可愛い? オレが?」
「ああ、とても魅力的だ。惚れ直したぜ?」
「この格好、気に入ったの?」

 俺が頷けば、茶虎は頬を赤く染めて訊ねた。

 茶虎と恋仲になってどれくらいが経っただろう。
 何度組み敷いたか数知れず。
 しかし茶虎は俺のちょっとした言葉や仕草で頬を染める。
 いつまで経ってもそういう初心な仕草がたまらなく可愛い。

 おかげで俺自身が大きく脈打っている。
「茶虎……お前とこうしている俺がどういう状況になっているのか教えてやろうか?」

 華奢な腰を引き寄せる。
「――っ!」

 俺の状況を知った茶虎はさらに頬を染めている。
 だが、俺を見る茶虎の目の中に欲望の炎が宿っていることを俺は見逃さなかった。

 間違いねぇ、茶虎も俺を欲している。

「紅を引いた唇も魅力的だ」
 吸い付きたくてたまらねぇ。

「……ん」
 にっこりと微笑んで見せれば、ただそれだけで感じるのか、魅惑的な唇から甘い声が弾き出る。

「茶虎……」
「……ふ」

 茶虎が倒れないよう、片方の手で腰を固定したまま、俺は赤い唇を貪る。
「……ん、んぅ」
 長い時間を掛けて吸い上げていた唇は腫れぼったい。
 舌を割り入れて歯列を通り、茶虎の口内を蹂躙する。
 接吻の合間に聞こえるのは、俺に応えようとする可愛い鳴き声だ。

「……あ」

 ガクン。
 俺との接吻だけで腰が抜けたらしい。
 茶虎が俺にしがみついている。

「よしよし、良い子だ」

 本当に可愛い子だ。
 どこまでも従順で健気で、そうかと思えば暴れん坊で目が離せねぇ。
 俺の保護欲をどこまでも刺激する。

「茶虎を軽蔑するなんて有り得ねぇよ」
「……せんぞ、さ……」

 パフン。
 華奢な身体をゆっくり褥に横たわらせる。

「気が強そうな吊り目も――真ん中に乗ってる小さな鼻も。俺に反応するこの従順な身体も――手の付けられねぇほどの暴れん坊。きっと俺にしか手懐けられねぇぜ? なぁ、茶虎。そう思わねぇか?」

 接吻に感じたせいか、焦点が合っていない。
 茶虎は恍惚状態になっているようだ。

「……ん」
 コクン。
 茶虎が力なく頷けば、俺の唇が緩む。

 俺にこんな表情をさせるのも茶虎だけだ。


 もし、茶虎がこの、老いぼれ(俺)を本気で望むのなら――。
 白無垢を着せてやろうか。
 もちろん写真のモデルなんかじゃねぇ。
 俺の妻として迎え入れる。
 どれだけ俺が茶虎に本気なのかを教えてやろうじゃねぇか。

 
 だが、まだ今はもう少し。
 この時をゆっくり楽しみたい。


 どれ、まだ夜は長い。
 茶虎が不要な心配をしなくていいように思いきり可愛がってやるとしようかね。

 俺は華奢な身体を組み敷き、夜が明けるまで可愛い鳴き声を聞き続ける。

 

 

 

 **仙蔵、茶虎を可愛がる。・END**