呪い返しのショートショート 微妙な嫌がらせをされたクリエーターさんのためのショートショート

 

 嫌がらせという呪いをかけられたので、呪い返しのショートショートを書いてます。

 

 ちょいグロですから苦手な方はやめてくださいね!!

 

 

 

 

 ふしゅるふしゅる

 奇怪な音をたててソイツは笑っていた。
 顔は醜く歪んでいる。
 普段は人間の顔だが、今はもう人間の顔ですらない。
 鏡を見たなら自分の醜い顔に吐き気すらするだろうが、それに気付かないから、そんな顔が出来る。
 それは誰にも気付かれない場所で、汚いことをすることが出来る人間だけが出来る顔なのだ


 趣味は嫌がらせだ。
 ネットの小説やイラスト、漫画の投稿サイトで、作品を投稿している人間を傷つけること。
 もちろん、誹謗中傷はだめだ。
 そうならない範囲での嫌がらせこそが大切なのだ。

 コメントする。
 「○○さんの○○という作品に似てるとおもいました」
 盗作と言ったらだめだが、似てる作品を示してやるのは問題にはならない。

 「誤字脱字が多いですね、ちゃんと書いたらどうですか」
 これはギリギリヤバい。
 サイトによっては相手にブロックされる。
 相手に嫌がらせが出来ないなら意味がないのだ。

 「主人公嫌い最悪、すごい嫌」
 これは微妙だが作品を貶しているのではなく、作品の中の登場人物について述べているのでまあ、ギリギリセーフか。

 大事なことは、アカウント停止やブロックにならない程度の嫌がらせなのだ。

 泣けるシーンに思いっきり笑ったスタンプをおくると胸がすく。
 
 サイトによっては良かったことを細かくしめす評価がある。
 エロいとか、萌えるとか、泣けるとか、笑えるとか。
 本来はとても感動した気持ちを読み手が書き手に伝えるためのツールだが、嫌がらせに使うには最高だ。

 笑えるシーンに泣けるを送る。
 泣けるシーンに笑えるを送る。

 作品の出来を評価することが出来るシステムがあるなら、最低評価を送っておく。

 だって、指先一つで嫌な気持ちにさせることができるんだから。
 こんな楽しいことはない。
 
 ふしゅるふしゅる
 ふしゅるふしゅる

 

 気持ち悪い呼吸音で笑いながら、ソイツは指先一つの嫌がらせを続けていく。


 もちろん誰にだってそうするわけじゃない。

 ソイツにだって、好きな書き手はいるのだ。

 その人にそんなことはしない。
 要は自分の気に入らないものを書いてるのがだめなのだ。
 そんなヤツのことなんか気にする必要もないし、この程度なら、誰にも責められることもない。
 バレないし。
 そういうこと。 

 嫌がらせを楽しむ。
 どんな嫌な気持ちがするかと思うと楽しくて仕方ない。

 

 ふしゅるふしゅる


 鼻から奇怪な息を吐き、醜く指先一つで人が作った作品を否定していく。
 非難されない微妙なやり方で。

 楽しい。
 ああ、楽しい。


 これは法律違反ではないし、嫌な気持ちがしたとしてもそれはシステムをきちんと使っているだけのこちらには非がないことだ。
 たまたま目についたところに、こちらの気に入らない作品を出しているそっちが悪いのだ。
 
 そう思った。
 その時だった。

 

 ふしゅる
 息が止まった。

 

 スマホの画面に指が張り付いたのだ。
 そんなバカな。

 

 ふしゅる
 息を吐いて引き剥がそうとしても、持ってる手もスマホに張り付いてしまっている。

 

 画面に指が溶け込んでいる??

 

 悲鳴をあげようとした唇は開かない。
 唇も唇に張り付いてしまっていた。
 
 見開いた目でまばたきした瞬間、そのまぶたも張り付いてしまう。

 


 醜い醜い醜い醜い 
 言葉ではない声が言った。 

 


 気持ち悪い息使いに思わず気をとられてしまったが、本当に醜いな。
 その思考も何もかも。


 声は嫌悪を隠さない。 

 

 我々がこの世界の人間をどうこうしようとこの世界のシステムの上では何の問題もない。
 だからこれからお前に私がすることも何の問題もないな。
 たまたま私の目につく空間にお前が存在していたのが悪いのだ。
 お前が醜いのが悪いのだ。
 お前もそういう考えなのだし、何をされても問題ないな。


 声はそう言った。

 見えないが何かが頭を捻っているのがわかった。 
 
 うひぃ  
 痛みに泣いた。
 悲鳴は出ないから喉の奥で


 グガキ
 ぶちん
 ぐちゅぅ

 骨が折れ、肉がつぶれ、脳が吹き出す音をきいた。


 そして死んだ。


 スマホと指が同化して、頭が砕けちった死体だけがその部屋に残された。


 嫌がらせに送った嘲笑うスタンプだけが指が溶け込んだ画面に映っていた。

 

 


終わり