imagination novel《one》
説明:このブログはただただ不意に思いついた小話です。
超ssなので、作者が楽しそうな設定をひらめいた書き溜め場所と思っていただければいいかと思います。
なので正直萌えないです。
しがないstoryなので、小説にして公開するような作品ではなく。
そういうことで、こちらにて書き起こしました。
今後、もしかするとこういうものがひらめいた時はブログで書く可能性がございますので、書く時はこのタイトルで統一させていただきます(*^-^*)。
書く側しか考えていない面白くないものですが、それでもよければどうぞです(・∀・)。
・カルロ・スコット:攻め。アマルフィーで、金さえ渡せば相手に関係なく誰とでも寝る。
・ジャーメイン・ブラム:受け。金持ちの家に生まれる。とあるクロージングストアに出掛けた時、服を選んでいるカルロに一目惚れした。
◆novel◆
肩まである漆黒の髪を後ろ手束ねた彼は相変わらず美しい。若さゆえの引き締まった肉体に分厚い胸。
彼と情を交えるのは嫌いではないが、けれどもジャーメインは隣で眠っている彼を見つめるこの時間が何よりも好きだった。
カルロには一目惚れだった。
ジャーメインがとあるクロージングストアに出掛けた時、服を選んでいるカルロに出逢ったのだ。美しい彼に心を奪われ、それ以来、ジャーメインは探偵を雇って彼がどういう性格で仕事や普段の生活なんかを事細かに調べた。
そして判ったのは、カルロはアマルフィーで、金を出せば誰でもベッドを共にする人物だった。
幸い、ジャーメインの父親は大きな会社を経営する社長で、家庭は裕福だ。札束を握り閉め、彼が常に出入りしているクラブへと足を運んで彼との関係を築き上げた。
けれども問題なのはそこからだった。なにせジャーメインはこの二十年間という年月で情を交わすどころか異性とさえも交際したことがなかった。
厳格な父親がそれを許さなかったのだ。おかげでジャーメインは友人さえも父親が好みの人間を選び、決められていた。
カルロには、初めての経験がしたいからと自分の慕情を告げず、身体を交えた。
それ以来、ジャーメインは毎日のようにカルロの元へ通い、情交を求めた。
彼は、ジャーメインがよほど自分の身体との行為が気に入ったのだと思ったらしい。金を受け取り、ただただジャーメインに快楽を与えた。
そんなある日のことだ。
ジャーメインはいつものようにカルロを買うため、クラブに赴いた。
例の如くカルロを見つけ、札束を差し出した。しかしカルロは眉を潜めていた。愛想笑いさえもない。
「もう金輪際おれに近づくな」
「どうして?」
「目障りだ」
「お金ならたくさんある!」
「だから金持ちの坊ちゃんは嫌なんだよ。金さえ払えば何でも自分の思い通りになると思いやがって!」
カルロは立ち上がり、去っていった。
「振られちゃったの? なんならおれが相手してやろうか?」
「離して!」
違う。何でも手に入るなんて思っていない。だってカルロには抱かれはしたものの、本当に欲しい物は手に入っていない。
ジャーメインが欲しいものはカルロの心だ。身体だけの関係なんて長続きはしない。けれども自分には金しか彼を引き留める術がないのだ。
「いやだ、離して!! ぼくは好きな人じゃないと嫌だ!!」
男の腕を振り切ってクラブを出た。けれどもカルロの姿はない。
カルロに恋心を告げれば良かったというのか。いや、そんなことをすれば、厄介毎が嫌いな彼はすぐさま遠ざかっていくに違いない。
彼の力強い腕や息遣い。肉体だけでも知れて良かったじゃないか。
ジャーメインは膝を折り、頽れた。
喉の奥から嗚咽がせき上げる。
公衆の面前だということも忘れ、むせび泣いた。
どれくらい泣いていただろう。闇夜がいっそう深くなった頃、空から雫が落ちてきた。ジャーメインの涙を隠すようにして、雫は細やかな雨へと変化して降り注ぐ。
凍えるような凍てつく雨が、悲しみに暮れているジャーメインに向かって打ち付ける。
冷たい雨は体力を奪い、立ち上がることさえもできない。
絶望に打ちひしがれていると、ふいにジャーメインの狭い範囲のみ雨が止まった。
見上げれば、先ほど自分の元から別れを告げたカルロが傘をさし、そこにいるではないか。
「なぜ、まだいるんだ」
ジャーメインの目は涙で潤み、何も見えないが、どこか動揺しているように見える。
「どうし、て……」
泣きすぎて嗄れている声で尋ねるジャーメインに、彼は言いにくそうに口を開いた。
「泣いているような気がしたから来た。相手が誰でもいいのなら引っかければいいだろうに。お前の容姿だ。きっとすぐに言い寄ってくる男は多いだろう」
「好きだから……カルロがいい。カルロじゃなきゃ意味がない。お金で解決できないことがあるのは知っている。だからこうして一夜でも隣にいられたらと僅かな望みをかけたのに……何も欲しがりません! だからお願い。もう少しだけ、一夜に付き合ってください。お願いだから……」
我ながらなんと勝手で浅はかな願いだろう。
今度こそ振られる。覚悟したジャーメインは固く目をつむり、唇を閉ざした。
「嘘だろう?」
そう言った彼の声はひっくり返っていた。普段クールで平静な彼とはまるで違う。驚いているようではないか。
顔を上げると、片手で顔を覆い、困惑しているカルロがいた。
困らせるつもりなんてなかった。
自分はわがままを言っているだけ。
無い物ねだりなんて子供がすることだ。ジャーメインは大好きな人を困らせてしまったことに気が付いた。
「ごめんなさい、今まで。ありがとうございました」
腰を上げ、背を向ける。彼から離れよう。
ジャーメインが走り去ろうとした時、彼の力強い腕がジャーメインの腕を掴んだ。そうかと思えば、すぐに抱き寄せられる。
「あのっ!」
驚きを隠せないジャーメインは、分厚い胸を押し退けようとすると、彼の腕にますます力が込められた。
「おれも好きだ。初めはただの身体の関係のつもりだった筈なのに、ふいに見せる君の笑顔が忘れられなくなった」
「カルロ……」
雨が降り注ぐ。けれどももう、寒くはない。ジャーメインの身体は力強くあたたかな彼に包まれているから。
end