【えちぅど】曇りスカイにふたりセカイ。

* * *

 枕元の上の出窓へ、散歩を楽しみにしている犬みたいに身体を伸ばしている。部屋は暗いが窓から入る弱い明かりと彼が背中で持ち上げる白い布団カバーで、曇り空なりの情緒を作ってくれる。

 

「どうした?」

「晴れないと、なんか眠い」

 

 甘えたような喋り方でこいつは窓の外ばかり見ている。微かな灰色に白の斑-まだら-模様。どこかで見た覚えのある柄だった。つい最近、はっきりと目にした。

 

「今日はずっと寝ていればいいだろう」

 

 曇りの日に眠くなるのは俺もだ。雨の日は憂鬱で、晴れの日はいたずらに外へ出てみたくなる。やらずにいたことをやってみたくなったり。

 

「もったいないじゃん、休みなのに。どっか行きたかった」

 

 そういうものなのか。俺は一緒に居れるのなら家でもいいけれど。今日みたいな日なんかは、どこにも行かないでじゃれ合っていたい。

 

「夢の中行くか」 

 

 まだ外を見ている仔犬みたいな姿を抱き締めて転がる。

 

「そろそろ起きないとだろ〜」

 

 いつもと立場が逆になって笑ってしまう。いつもは俺が起こす。それで彼がなかなか目覚めてくれない。犬や猫を抱き上げるみたいに俺の上で四つ這いにした。ここだけ、雨雲。それでいて気持ちは晴れの日。

 

「それなら俺の起こし方、知ってるよな?」

 

 俺が毎度毎回しているのだから恥ずかしいことではないのに彼は顔を真っ赤にした。

 

「じゃあずっと寝てろよ〜」

 

 拗ねた顔が可愛い。けれど俺を見ないのはよろしくないことだ。抜け出ようとするこいつを抱き枕にする。子供みたいに暴れているのが、はしゃいでいるみたいだった。

 

「待って」


 真面目そう、怖そう、何にも興味無さそうだなんてよく言われるけれど、そんなことはない。


「チュウして」


 こいつを真似て、可愛くおねだりできる程度には感化されている。睨んでいるつもりなのかな、少しの間見つめ合って、顔が近付く。頬が柔らかく押される。ぎこちない。意識していないことを意識してしまう。


「ほら、放せよ!」


 放すつもりだった。でも放せなくなった。今日は曇りで肌寒いから。それ以外に理由があるか?


「放さない」


 今度は俺が雨雲になって、予定も予報も関係なくてキスの雨でも降らせようかな。

* * *

900字近めの800字台。

 

 「夢の国行くか?」と迷って受さんが本気にして違った時の落胆は可哀想なのでやめた(この世界に夢の国. a.k.a浦安があるかは知らない)。

 

※2021.2.7…ラスト「俺の雨」が卑猥な感じがするので「キスの雨」に変更。