【えちぅど】青い空白い雲それが当然で

望郷BL

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 恋人の地元についていく。俺の地元からそう離れたところではないが、車が必要なところで、電車は多くて1時間に3本、11時と14時に限っては1本もない。とにかく田舎で、けれど車さえあれば国道を真っ直ぐ、曲がるのも数えるほどで、大型のショッピングモールもある。おかげで古き良き商店街は寂れがち、それはそれでまた趣きがある。年々店が変わっていく。ブティックはパン屋になり、本屋はインテリア雑貨の店になった。田舎を田舎みたいにしていた空き地は、ソーラーパネルの畑か新興住宅の田んぼ。少し紛れて古民家なんかが覗く大通り。

 


 それが俺たちの故郷。市は違うがすぐ隣。俺はほぼ境い目に住んでいる。だからほとんど同じ生まれ。

 

 この土地が彼を生んだのは大きなことだ。だから俺も、彼の生まれたすぐ近くに生まれたことはきっと大きい。都会に生まれ都会で育つのもいいけれど。不便は不便なりに、過ぎた思い出が美化されたりして。


 建物も何もない空風-からかぜ-に逆行するのも、来ない電車に暫く駅で屯(たむろ)するのも、カラオケボックスなんて遠いから拓けた空に歌うのも。


 青く広い空に、白い雲、穏やかな風と果てしなく続く畑や田んぼ。それが当然にあった。そこが世界のすべてで、テレビの向こうは別世界だった。彼と都会に出るまでは。

 

 俺たちはまだまだ若くて、きっとこれから忙しくなる。年が経つにつれ家族の数も見た目も性格も変わっていって、地元に根付いた友人たちも散っていく。見知った町が段々と知らない土地になって、ここに留まる理由もそれほどない。

 

 電車で2時間しない場所。帰ってきたればすぐ来られる土地。そう離れてはいないけれど。

 

 

 多分それは、ここに馳せたみんながみんな揃って、懐かしくいられるという意味で、
 あと何回来れるかな、なんて君が訊くのは少し切ない。

 

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700字と少し。

 

Q.BLでなくてもよい?

A.ビジョンがBLでした。