【そりはぇちうど】1000アクセス記念

 

 

* * *


「おい」


 彼を呼び止める。昨晩のカレーの残りを楽しみにしていたようだ。しっかりを火を通せと言ったら、それが本題みたいに少しサルみたいな可愛い顔が鍋ばかり見ている。ショウガラゴに似ているな。身のこなしも。雰囲気は柴犬で、ネコみたいなところもあるけれど。いや違う、そんな話をしたいんじゃない。


「お前も食う?牛乳入れちゃうケド」
「いいや、俺は要らない……」


 彼の調子に呑まれて俺は何を言おうとしていたか忘れてしまった。悪くない。俺は彼に振り回されている。こんな幸せがあるだろうか?あるわけない。俺と彼の日常はこれからも続く。俺が望んで、彼もそれを望んでくれるのなら。


「で、なんか話あんだろ?カレー食いながらできる話?」


 鍋がコトコト言っている。焦げたカレーは嫌いだっただろう?にんじんは薄切り、じゃがいもは大きくたくさん、肉は鳥。辣韮-らっきょう-よりも福神漬け。隠し味には味噌。それを牛乳と一緒に食べる。彼の食生活が俺の常識になっている。意識しないといけない。これは彼との生活だけのものなのだと。


「お〜い。寝てる?カレー食って目ェ覚ませよ。コーヒー淹れてやろっか」


 スプーンを齧るな。可愛いから。本当に俺は寝呆けているのかと思った。ダメだ、すべてが可愛い。コーヒー淹れて欲しい。いいや、まだ目を覚ますには早い。寝ても覚めても彼がいて、正直寝ているのか起きているのかも分からない。朝起きて彼がいて、昼間は空けて夕方にまた会えて、夜まで一緒だ。最高だな。


「自分で淹れる」


 お前が淹れるとコーヒー風味のお湯になるから。ありがとうも言えずに、反射で飛び出してしまう言葉を呑み込む。俺だけこんなに好きだと知られるのは大変よろしくない。大変よろしくない。俺の醜態が1000回も見られたことになっても、絶対に……


 まぁ、彼のいじらしさで全部掻き消えるんだけれどもな、俺の情けない姿なんかは。簡単に。塗り潰される。些細なことだ。


「なぁなぁ、で、なんの話だったん?」

「お前の可愛さは1000回見ても色褪せないなって……」


 何の話かなんてもう忘れた。どうでもいいことだ。


「は?」


 スプーンが落ちる。齧るからだ。火傷するなよ。お前はそそっかしいから目が離せない。

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900字ちょい

 

 

ここまでくると一種のヤンデレまであるな。

 

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