用語解説 ガヴァネス
ガヴァネス(governess)は、簡単に言えば住み込みの家庭教師です。
もう少し詳しく説明しますと、上流階級の子女を教える、本人もレディである住み込みの家庭教師ということになります。
19世紀になっても働く女性の地位は低かった。
それどころか、上流階級に属しているならば男性ですら職に就くのは賤しいとされていた時代です。
ガヴァネスの地位がおおよそ推測できるというものです。
レディとは中流以上の出で、マナーや言葉使い、教養が身についている女性を指すわけで、そんなご身分のいわばお嬢様が働くなんて“はしたない”と陰口叩かれること必至。
もちろん彼女たちには働かねばならない理由があったのですが、そんなこと世間は知ったこっちゃありません。
職に就かねばならない主な理由は、家の借金、当主の死去で家が破産など。
没落貴族などがそれに当たりますね(アルフの家は傾きかけてはいるものの、完全に没落していない)。
ガヴァネスが教えるのは読み書きだけではありません。
絵画や音楽などの教養も説きます。
そして、お屋敷の仕事も時に言いつけられたようです。
重労働には携わりませんが、縫い物などの針仕事なども任せられたとか。
そして、他の使用人たちとの軋轢。
使用人であって使用人でないガヴァネス。
いちおうはレディであるガヴァネス。
教養や作法を身につけているガヴァネス。
当然ながら、プライドも高かったと思われます。
懸命にプライドを保っていたと申すべきでしょうか。
そんな“プライドの高い”、使用人でない使用人と下層階級に属するメイドたちが仲良く共存できるわけもなく。
苛めの対象となることも多かったそうです。
若く美しいガヴァネスならば、夫や息子が誘惑されるのではないかと苛立ちを募らせる奥さまもいらしたことでしょう。
実際に、道ならぬ関係に堕ちたガヴァネスは少なくなかった。ただし、誘惑ではなく強姦という形で。
創作の世界で最も有名なガヴァネスは、パラソルで空を飛んできた彼女ではないでしょうか。
メリー・ポピンズ。
ディズニーの製作によるミュージカル映画を観た方もいらっしゃるのでは?
名女優ジュリー・アンドリュースがタイトルロールを演じています。
「チム・チム・チェリー」は名曲ですな!
実在の人物ではマリー・キュリー。ポーランド出身の女性ですが、研究者の前はガヴァネスでした。
最後に、絵画からこちらを。
『かわいそうな先生』レッドグレイヴ