『ESCAPE』裏話その1


――『伊織は、実在する人物がモデルでした』――


「ねえ、見て見て!」

もう何年前だったか忘れるくらい昔。私が高校1年だったか、2年だった頃のお話。

毎朝、超激混みになる満員電車の中で、友人が私の腕をぎゅーーーっと掴んで耳打ちしてきたのです。

 

「な、何やの? 痛っ、痛いってば」

 

必死に掴んでくる友人の手。爪が腕に食い込んで痛いっちゅーの!
しかも、耳元にかかる息が、なぜか荒い! (*´Д`)ハァハァ

 

「ああっ、あの人! 見て! めっちゃ綺麗」

 

そう言われて、私は友人がこっそり指をさした方に視線を向けたのです。
混み合う車内で、人と人の隙間からチラリと見えたその人は、ドアに持たれて顔を車内の方に向けて立っていた。

最初は顔しか見えなくて、

 

「あ、ホンマや……きれ……い」

 

透き通るような白い肌。口紅を塗ってるわけでもないのに、ほんのりと赤い唇。少しくせのある黒い髪。伏目がちにしていると、めちゃ長い睫毛が、白い頬の上に影を落としてる!

 

――綺麗な女の子だなぁ~って思ったんですよ。

 

だーけーどーーー!
電車が揺れて、人と人の隙間が大きく開いて、その人の全身が見えた時……。

 

「おぅっふ?!」

 

と、私の口からは思わず変な声が漏れたのでした(笑)
だって、女の子だとばかり思っていたその人は、なんと学ランを着ていたのです(*´Д`)ハァハァ

 

「え? 男……?」

 

しかもね、ボタン何個外してたのが憶えてないけど、学ランも中のシャツも開けていて……(*´Д`)ハァハァ
な、なんだ、この人色っぽい(*´Д`)ハァハァ

 

「そう! お と こ!! ね? ちょっとジルベールに似てると思わへん?」

 

――ジルベール!!

 

アッァーーッ! と、思いましたw
ちょうどその頃です。
私に腐は素晴らしいんだぞと教えてくれたこの友人が、

 

「とにかく! 何も言わずにこれを読め」

 

と、あの名作、風木の(たぶん6巻くらいまで)を、新しいの買うから返さなくてもいい。と言ってタダでくれたのを読んだばかりだったのです。

ジルベールなんてね、あんな耽美な少年は漫画の中にしかいないと思ってたんですよ。
だけど、居た!! こんな満員電車の中に!! しかも日本人!!!
アッァーーーッ! となってしまうのは無理もなかったと今でも思います。

そしてそれからは、毎日同じ時刻の同じ車両で、彼を見かけるようになりました。


私達は、彼のことを密かにジルベール様と呼び(笑)
友人は学校に着くまでの間、ずっと私の勝手な和製ジルベール様の妄想話に付き合ってくれていました。

 

『ESCAPE』は、ン十年温めていた、その頃の断片的な妄想が、ストーリーに紛れていますww

鈴宮伊織は、学ランを色っぽく着崩していた、この和製ジルベール様がモデルだったのです(笑)

 

(つづく)wwww←需要なくても続きますよww


★次回は、いつもジルベール様を守るように立っていた二人の強面ヤンキーと痴漢についてwww

 

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↓のイラストは、昔、他サイトで『ESCAPE』を公開する時に描いた表紙。これが初めて描いたいおりんです。
『ESCAPE』イラスト一覧の方にも載せています~。

 (イラスト一覧の方のコメレスに短い触手SSを付けたので、こちらにもイラストの下に載せておきます(笑))



――突然上から落ちてきた茨が、まるで生き物のように身体に巻き付き、棘が僕のシャツを引き裂いた。
「痛いっ」

暴れれば暴れるほど、露わになった肌に棘が直接食い込んでくる。
辺りに充満するオールドローズのダマスク系の強い香りに酔ったのか、頭の芯が痺れたようにクラクラとする。
さっきまで痛いと思っていたはずなのに、硬い棘に胸の先端を擽られて、背中にゾクゾクと甘い痺れが駆け抜けた。