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第1話
電車の車内には沢山人が乗っていて、優(ゆう)のため息は誰かに聞かれることなく消えていった。
--これから俺、どうなるんだろう。
流れる景色をぼんやりと眺めながら、漠然とした危機感を感じていた。
事が起きたのは今朝、いつも通り会社へ出勤したときのことだ。
会社のドアの前に不自然な人だかりができていて、不思議に思いながら優もドアへ近づくと1枚の張り紙が貼られていた。
張り紙を読んで唖然とした。
そのときの気持ちをなんと言い表せばいいのか分からない。
同僚達の青ざめる顔と張り紙を見比べる優の顔もまた、青ざめていたに違いない。
優の勤めていた会社は〝倒産〟したのだ。
こんな事を人生で経験するとは思わなかった。
全く嬉しくないサプライズに優は暫くの間動けなかった。
焦り、危機感、怒り・・・そんなものより優の心に真っ先に顔を出したのは虚無感だ。
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