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おまけ!
正直、買ったはいいけどどうしようかと思ってた大人のおもちゃを持ってきてよかった。
佐藤くんのでイきたい!
あんな言葉を理人さんの口から聞けるなんて思ってもいなかった。
うーん、録音しておきたかったな。
そうしたら会えない夜も……ああ、こんなこと考えてたら、また変態変態って怒られてしまう。
すっかり拗ねてしまった様子の理人さんの頭を撫でながら、絨毯に散らばったままのチョコの山をぼんやりと見つめる。
世の中には母親からのチョコが唯一だという男子もいるというのに、本当に罪づくりな男だ。
すっかり嫉妬心のなくなった澄んだ心で見ていると、箱や袋ひとつひとつに、色とりどりの付箋が貼り付けられているのに気付いた。
綺麗な字で、総務・林さん、とか、建築技術・田中さん、とか書かれている。
「まさかこれ、もらった人の名前全部控えたんですか?」
「あー、一応な。お返ししないといけないだろ」
「付箋で貼ってあるとなんかすごい事務的ですね……」
「会社でもらうのなんてそんなもんだろ。義理なんだから」
「そういう人も、いるでしょうけど」
理人さんは、本当にわかっていない。
義理だと宣言しながら、その秘めた思いをチョコに込めた女性がどれだけいたことか。
「……来年は断る」
「えっ?」
「俺も、全部断る。佐藤くんのしかもらわない」
理人さんが、ごめん、と小さく呟き唇を尖らせた。
あ、かわいい。
それに嬉しい。
当たり前のように『来年は』って言ってくれた。
「義理でもだめですか……?」
「は?」
「って上目遣いで言われたらどうするんですか」
最近、俺は〝意地悪〟だ。
理人さんのかわいい顔を見ると、どうしても意地悪したくなってしまう。
その潤んだ瞳でたっぷり俺を睨んでから、理人さんがぷいっと顔を背けた。
「本命が怒るからごめんな?」
「えっ……」
「って言う」
……うわ。
うわ。
うわあ。
「理人さん、そういうの、だめです」
「ひゃっ!」
「かわいすぎる……」
耳まで真っ赤になった理人さんが、俺の腕の中で激しくもがいた。
「きょ、今日はもう無理だからな!」
「わかってます。抱きしめるだけ」
「……ん」
途端におとなしくて身を預けてくる理人さんに、愛おしさが募った。
理人さんにチョコレートを渡した人たち全員に、得意げに言ってやりたくなる。
フッ……悪かったな。
理人さんは俺のものだ。
「……週末、買い物付き合えよ」
「買い物?」
「新しいの、買う。……スーツ」
「プッ」
「だ、から、笑うな――」
ぐうううぅぅぅぅ……っ。
「……プッ」
「っ」
「せっかくだからどれか食べますか?チョコ」
「……佐藤くん選んで」
「うーん。どうせなら普段食べられないような高級な……あ」
床に転がるチョコの中で真っ先に目に付いたのは、電気の光に反射して黒く光る平らな箱だった。
シンプルな無地の箱に、赤いリボンがかけられている。
手を伸ばして拾い上げると、妙に軽かった。
「これとか高そうじゃないですか?」
「あー……開けてみて」
「はい」
十字に結ばれていた真っ赤なリボンを解き、蓋を取る――と。
ひらり。
なにかが、舞い落ちた。
それは、
真っ黒なTバックのパンツ。
「は?え?なにこれ!?」
理人さんがその細い布切れを拾い上げて、目を白黒させる。
俺は、手に持っていた箱をゆっくりと裏返した。
そこに貼り付いていたピンク色の付箋には、
『木瀬』
グシャ、と箱を握りつぶすと、理人さんの顔からサッと血の気が引いた。
「理人さん、木瀬さんからも受け取ってたんですか……?」
「や、ち、違う!直接受け取ったわけじゃない!た、たぶんあいつが勝手に紙袋に……!」
「なんで後ずさるんですか」
「だ、だって佐藤くん、顔が怖い!」
「ほんとは来月理人さんの誕生日プレゼントに……って思ってたのがあるんですけど」
「え!?い、いや、無理!今日はもう無理!絶対無理だから!」
「やってみなきゃわからない……でしょ?」
「佐藤くんっ、佐藤くん!?ちょ、ちょっと待っ……あぁんっ!」
「いい声でるじゃないですか」
「あっ、や、やめっ……あ、あ、あ――…」
ハッピー・バレンタイン!
fin
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