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ニクいあんちくしょう

◇ 「たっちゃん!今日はお肉の日なんだって」  朝飯中、テレビを見ていた幼馴じみで同居人の和彦が話しかけてきた。 「それがどうした」 「だってお肉の日だよ?今日の夕飯ステーキにしようよ」  質素な朝食が並べられたテーブルに視線を落とし、ため息を吐く。少ない仕送りとバイト代でどうにか遣り繰りしている貧乏大学生の俺達に、そんな贅沢が許されると思っているのか。 「阿呆。ステーキなんか食える余裕が俺達のどこにある」 「え〜、じゃあすき焼きでもいいよ?」 「てめえの耳は飾りもんか?金がねえっつってんだろーが!」 「いてっ!いてて…っ、いたいよー!たっちゃん」  たわ言をほざく和彦の耳を引っ張り耳元でそう叫んだ。涙目になった奴はしょんぼりしながらも、だってだのでもだのブチブチ言っている。そんなお気楽極楽な和彦のケツを叩き、身支度を済ませて大学へ向かった。  講義も終わり、今日はバイトもないのでスーパーに寄って帰ることにした。特売品をチェックしながら必要な物をカゴに入れていく。…と、精肉コーナーが目に入り今朝の会話がよみがえってきた。  しかしバイト代が入るのは明日だ。普段だって滅多に買わない牛肉。一番厳しいこの日に手が出せるはずもない。俺は潔く精肉コーナーを後にした。  アパートに帰り夕飯を作っていると和彦がバイトから帰ってきた。 「ただいま〜たっちゃん」 「お帰り。夕飯出来てっから手ぇ洗ってこい」  夕飯の席に着いた和彦は食卓に並べられた唐揚げを見て歓声をあげた。 「ステーキは無理だからな。これで我慢しろよ」 「うんうんっ。たっちゃんの愛を感じるよ。ありがと、たっちゃん!」  精肉コーナーを後にした俺は、豆腐を買って帰りスマホでレシピを検索した。豆腐を水切りし鶏肉風にして作った唐揚げを、和彦はパクパクと旨そうに食っていく。  …まあ、大豆は畑の肉って言うし肉には違いないよな。けど、偽物の肉を嬉しそうに頬張る和彦を見てたら、なんだかちょっと罪悪感が湧いてきた。      ……しょうがねぇ。明日バイト代が出たらすき焼きにしてやるか。まぁ豚すきだけどな。 ◆  今朝、たっちゃんにお肉が食べたいなんて言ったけど、貧乏な俺達にそんな余裕があるわけないのは分かってる。だからお肉の日にかこつけて、『ステーキが駄目ならたっちゃんを食べさせて!』って作戦に持ち込もうと思ってたんだけど…。  なんと、夕飯には唐揚げが用意されていた。  これが豆腐の唐揚げなのは気付いてたけど、たっちゃんが俺の我が儘を聞いて頑張って作ってくれたこの唐揚げは、本物のお肉よりもずっとずーっと価値がある。だから俺は気付かない振りをして、偽物のお肉に入った本物の愛情をしっかり噛み締めた。  豆腐の唐揚げはお世辞なしに美味しかったし、俺を見るたっちゃんの眼差しは優しくて、俺は幸せな食卓に大満足。  ……でも、たっちゃんを食べられるのはまだまだ先、かなぁ…? ****** (たつき)…世話焼き平凡 和彦(かずひこ)…ゆるゆるイケメン。ずっと樹に告白する機会を伺いながら8年。いまだに幼馴じみ止まり。 母子家庭同士の幼馴じみで節約の為に同居して大学に通う貧乏大学生の2人。 あとがき 豆腐でお肉。私は作った事がないのでどんな物かわかりません。ゴメンナサイ。料理上手な人ならば美味しく作れるのではないでしょうか?タブン(;θ;)そう、たっちゃんは料理上手なの☆料理甲子園に南を連れてって!なくらい。←ナニソレ 樹は和彦を手の掛かる幼馴じみで親友としか思ってませんが、イケメン和彦はモテモテにも関わらず樹以外に興味なし。二人でゆる〜く毎日を過ごしてます(*´∀`*)ノ

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