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事の起こり

いつもの柔和な表情は消えて、鋭く冷たい目が俺を見下ろす。 「ご……ごめんなさい……」 ガタガタとローブを持つ手が震える…… 「リム・アゼリア……ここで何をしていた……」 俺を見下ろす、この男の名はカイル・ゾグラス。 ベルべラット国、黒の魔導士団の最年少で団長に任命された男。 黒の魔導士団に半年前に入団した俺にとっては雲の上の存在……。 憂いのある金髪の前髪から覗く翡翠色の瞳に睨まれて、俺は身動きを……自分のあられのない姿を隠すことも出来ずにいる。 「何をしていたんだ?詳しく言ってみろ……」 言える訳が無い……。 俺の手のひらには自身の出したモノが、自分の罪の証拠として残っている。 しっかり現場も見られている。 物的証拠も目撃者も揃っているこの場で、糾弾されている。 「あ…………俺…俺……」 ―――――――――――――――――――――― それは今から数時間前の事…… いつもの様に魔法を暴走させて、備品を壊した始末書を書いていた。 日はとっくに落ちて、辺りはもう暗く、この塔に残っているのは俺と入り口の守衛ぐらいだろう。 始末書を提出するために上司達の控え室へと向かう。 書き終わったら、机の上に置いておくようにとサイラス隊長から入室の許可はもらっている。 それは……ちょっとした出来心だった。 憧れの人のローブ………。 誰も見ていない…………。 俺は………ローブに顔を埋めて大きく息を吸い込んだ。 クラクラするような甘い匂い……。 脳が痺れる様な匂いに……手が股間へと伸びた。 カイル団長の匂いに包まれて、まるでカイル団長に抱き締められている様な気分になって……。 「カイル…団長…んんっ……」 団長のローブに顔を埋めながら自分のモノを慰める。 『リム・アゼリア』 団長が俺の名前を呼ぶ声を思い起こしながら夢中で手を動かした。 『リム……こんな事をして……お前は悪い子だな』 団長、団長、団長っ………!! 「…………っ!!」 呆気なく俺は自分の手のひらに吐精した。 軽い疾走感の後にやって来るのは、憧れの人を汚してしまった罪悪感と、大それた事をしてしまったと言う自責の念。 早く証拠を隠蔽しなくては……。 「へぇ……可愛い顔しててもちゃんと男なんだな」 「っ!!!」 慌てて振り替えると、扉に凭れかかる様に、俺の所属する隊のサイラス隊長が立っていた。 「大人しそうに見えて……こんな大胆な事して……」 サイラス隊長がゆっくりとこちらに歩いてくる。 「おっお願いします……この事は団長にはっ!!」 「それはお前次第だな……リム」 サイラス隊長の手が俺の顎を掴み上を向かされると、ギラギラとした炎の揺らめく目と視線がぶつかる。 「黙って欲しければ……服を脱いで俺に股を開け」 何を言われたのか、一瞬理解が出来なかった。 「団長の部屋に忍び込んで一人で盛ってるくせに純情ぶってないでさっさと脱げよ……それともここで見たことを団長に話して良いのか?」 肩に手を乗せられて…… こんな事…団長に知られたら……。 カイル団長が男の人達からそういう目で見られる事を嫌っているのはよく知っている。 嫌われたくない……蔑みの目で見られたくない……。 俺は………自分のローブを脱いだ。 「物わかりの良い子だ……」 サイラス隊長の目が情欲の熱を帯びて笑った。 震える手でシャツのボタンを外し、ズボンから足を抜く。 サイラス隊長は、一糸纏わぬ姿の俺を満足そうに見ると、床へ押し倒した。 「その怯えた顔……良いな……あのくそ生意気なガキの花を俺が手折る事が出来るなんて最高な夜だ……ほら、足を開け」 悔しさと屈辱に唇を噛みながら、足をゆっくりと開くと、サイラス隊長の手が俺の孔へと触れ、指が戸惑い無く差し込まれた。 「うっ……うあっ……あぁぁ………」 激しい嫌悪感と異物感で吐き気がする。 無遠慮な指が内壁を探る。 「あのガキも存外、馬鹿だな……さっさと手を出してりゃ俺に奪われる事も無かったのにな……お前が引っ掛かってくれて良かったよ」 指が抜き差しされる度に内臓を抉られる。 頭の中は早く、前戯なんて良いから早く始めて、早く終われと願うばかり。 ふと、カイル団長のローブが目に入る。 ……汚したくない……汚したく無いけど……。 せめてこの行為が貴方との行為であると夢を見させて欲しい。 手を伸ばして引き寄せ匂いを嗅ぐと、胸いっぱいにカイル団長の匂いが広がって……涙が溢れた。 「良いなぁ……奴から奪ってやってるって感じが増すよ」 指が抜かれ、サイラス隊長が自身のモノを取り出した。 思わず閉じようと力の籠る膝を無理やり開かされる。 「足を開け、リム。あいつに知られたくないんだろ?だったらその体を俺に差し出せ」 「恐喝か?」 突然の第三者の声に慌てて、そちらに目を向けた。 「カイル……団長……」 「団長っ!!違うんです!!これはっ、こいつに誘われてっ!!」 慌てて言い訳をするサイラス隊長に近付いて来たカイル団長はその手でサイラス隊長の頭を掴むと、 「言い訳は後で聞く……取り敢えず、お前は牢屋に入ってろ……」 言うなり、サイラス隊長の姿が消えた。 団長の転移魔法だろう。 「………………」 「ローブが鞄から消えてる事に気付いて戻って来たんだが……それは俺のローブだな……何をしていたのか教えて貰おうか?リム・アゼリア」 翡翠の瞳が俺を射抜く。 終わった……。 絶望感に飲み込まれた。

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