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第12話

千尋はあっという間にトオルの兄弟と仲良くなってしまった。 特に1番下の弟が千尋の膝に座ったりしてベタベタと懐いている。 「ヒカル、こら千尋が重いって」 なんとなくムッときて千尋から弟を引き離す。 「やだ!千尋お兄ちゃん優しいもん」 ヒカルは暴れて千尋の方へ行きたがる。 「凄いよね、ヒカルが懐くってさ」 すぐ下の弟がそういう。 「そうなの?」 「うん、ヒカル、人見知り激しいんだあ」 「そうなんだ……えっと、」 名前を聞かずに遊んでいた事に気付いた千尋。 トオルの弟達はカケル、サトル、ヒカルで全てにルがついていた。 「兄ちゃんが連れてくる友達って俺らと遊んでくれないしさ」 不満そうに三男のサトルが言う。 「当たり前だろ?中学生が小学生や幼稚園児と遊ぶと思うか」 トオルがその不満に答える。 「でも、千尋兄ちゃん遊んでくれてるやん」 「男兄弟いないから……俺もね弟欲しかったから」 千尋はニコッと笑う。 「千尋兄ちゃん、一人っ子?」 「ううん、姉がいるよ?」 「へえ?可愛い?千尋兄ちゃんがカッコイイからお姉さんも綺麗なんだろうなあ」とカケルが言うと「ミサキちゃん美人だよ」トオルはすかさず答えた。 「やっぱり!!」 弟達は声が揃う。 「もう!ほら、そろそろ、お前ら3人で遊べよ」 トオルはなんとか邪魔者の弟達を追い払いたい。 しかし、「そろそろおやつにしない?」と母親まで乱入してきたのでもう諦めるしかなかった。 ◆◆◆ 弟達が大人しくなったのはおやつを食べて昼寝を始めたからだった。 ようやく2人で部屋へ。 部屋と言ってもカケルと一緒で二段ベッドがあって、机が並べばスペースはあまりない。プライベートは無いに等しい。 「ごめん、弟達が」 「えっ?何で謝るの?」 自分に謝るトオルに不思議そうな顔。 「うるさかっただろ?」 「ううん、楽しかったよ」 笑顔で返され、ホッとするトオル。 さて……2人で何をしよう?と思う。 さっき弟らとやったゲームの続き?それとも何か映画とか? あ、本の話とか? 「ねえ千尋」と彼の方を見るとベッドに寄りかかり眠っていた。 えっ?えええっ!!! 何話そうと悩んだのにちょっとガッカリ。 でも、弟達と遊んでくれたから疲れるよなあ……と弟らをちょっと恨みそうになるトオル。 ちゃんと寝た方がいいかな?と千尋の方へ姿勢を向ける。 寝顔が視界に嫌でもはいってくる。 凄く可愛い寝顔。 眠ると弟達とあまり変わらないように見える。あ、そうか去年は小学生だっけ?と気付く。 でも、変に色気があるというか大人っぽく見える千尋。 彼の同級生と比べても大人っぽく見えていた。 表情をあまり変えないからなぁ? でも、眠ると本当に可愛い。 つい、覗き込んでしまう。 「んっ……」 千尋がピクリと動いたので慌てて離れた。でも、起きたわけではなく、寝返りのような感じだった。 少し動いたのでそのままトオルの方へズルズルと身体が落ちてきて、頭がトオルの太もも辺りでとまった。 自然に膝枕になってしまったのだった。 ひゃー!!と心臓が口から出そうな勢いのトオルである。

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