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第11話

◆◆◆ 「兄ちゃん、本当は彼女くるんだろ?」 待ちに待った休み。千尋が来る日なのだがトオルが千尋の家から帰ってきてからずっと家の掃除をしまくっていたので弟にニヤニヤしながら聞かれた。 「だから、男の友達だってば!」 「嘘やん!いつも兄ちゃんの友達くる時は掃除とかせんやん?お母さんにお小遣いから出してもいいから高いケーキ買ってきてとかいいよったやん」 弟の指摘通り、同級生とか連れてきても散らかった部屋とか気にしていなかったし、お菓子出してとか母親に言わなかった。そりゃ、怪しまれるよな……と自分でも思う。 「だって、千尋んち金持ちだから……少しでもさ」と思わず言葉を漏らして「へえ、彼女、千尋ちゃんって言うんだ」とニヤニヤされた。 「違うって男!!男でも千尋って名前いるだろ?」 慌てて否定しても「お母さんに報告するう」と逃げられてしまった。 「か、彼女じゃないし!!」弟の後姿に叫んだ後に彼女というワードに何故かてれてしまった。 千尋は女の子じゃないから彼女じゃない。男の友達。 でも、なんで家に来るってだけでこんなにドキドキして舞い上がっているのか自分でも分からなかった。 ◆◆◆ 弟がトオルから聞いた千尋の名前を報告しようとした時にチャイムが鳴った。 そのチャイムはトオルの耳にも届いて慌てて部屋を出た。 真っ先に玄関に言ってドアスコープを覗いたのはトオルをからかっていたすぐ下の弟。 「なんか凄いジャニーズJrっぽいのがいる」 その言葉で後ろにいたトオルの母親の目がキラリと光る。 「えっ?お母さんにもみせて」 ワクワクした顔の母親と弟を玄関から引き離したのはトオル。 ドアスコープで千尋を確認して慌ててドアを開けた。 トオルが顔を出すと千尋が笑顔で「トオル」と名前を呼ぶ。 「こんにちは」 此上が真後ろに居て頭を下げた。 「こここ、こんにちは」 ニワトリか!!と自分に心で突っ込みを入れる。 「じゃあ、帰り迎えにくるから」と此上が千尋に言う。 「1人で帰れるってば、今日だって電車で良いって言ったのに」 少し拗ねた顔の千尋。 「神林くん千尋をよろしくね」と千尋の言葉を無視した此上はトオルに頭を下げる。 それをみた千尋は「ちょ!!やめてよね、もう帰って」と一気に顔を赤らめる。 此上は車に乗り込むと帰って行った。 「此上、過保護なんだよ、ちゃんと断ったのに車に無理やり乗せられた」 千尋は決して自分が送って貰ったわけではないと言い訳をする。 「なんか……わかる気がする」 「えっ?何が?」 トオルが突如発した言葉にキョトンとする千尋。 「千尋、可愛いから変質者とかに目をつけられそうだもん」 「は?男だよ?」 さらにキョトンとなる千尋。 「今の時代……っていうか、男も女も関係ないんだと思うよ、変質者には」 此上は千尋のボディガードと言っていた。だから護るんだ。カッコイイ。 「へ、部屋行こう」 自分で言った言葉なのに、なんだかやましい気持ちになるから不思議だった。 「うん」 千尋はトオルのドキドキとやましいとか複雑な気持ちを知らないので可愛く笑う。 そして、千尋を中へと案内して、あっ、と思った。 弟と3人と母親がズラリ並んでいた。 「はじめまして、西島千尋といいます」 千尋はペコりと頭を下げて挨拶をする。 母親と弟達は今までトオルが連れてきた友達とかなり違うのを感じていた。 「こんなカッコイイ友達いたのね」 母親の目がキラキラしている。トオルの母親はジャニーズ系アイドルが好きで彼等が出ているテレビは毎回チェックしている程。 「あの、これお土産です……えっと、手作りのケーキです。このう……あ、えっと」 此上が作ったと言いたいけれどどう説明すればいいのか分からない千尋は言葉に迷う。 「あ、此上さんのケーキ?ありがとう」 誰が作ったか分かるトオルはお土産を受け取った。 「部屋にいくからうるさくするなよ」 トオルは弟達にクギを刺す。 「えー、お兄ちゃん遊んでよお」 1番下の弟がトオルにまとわりつく。 「今日はだめ!!」 「なんで?」 何だか泣きそうな顔の弟を見た千尋は「いいよ、何して遊ぶの?」と微笑んだ。 ええっ!!!せっかく、千尋が部屋に……とガッカリしてしまうトオルだった。

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