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第10話
「学校での千尋どう?」
食事をしながら聞かれた。
「あ、えっと、校舎違うから放課後とかしか分からないんですけど、千尋のクラスの子は女の子にモテてうるさいくらいだから無口らしいです」
千尋の同級生から聞いた情報を話すトオル。
「ちーちゃん、やっぱりモテるんだ!そりゃそうだよねえ、アイドルみたいだもん」
ミサキは嬉しそうに千尋を見ている。
「へえ、あまり学校の話をしないから……なんだよ、千尋、お前モテてるんじゃん」
此上は千尋の頭をグリグリ撫でる。
「やめろよ、此上!」
キッと此上を睨む千尋。
学校ではみない顔。
「照れてるのか?」
ふふふっと笑いながらもちょっかいを止めない此上とそれを嫌がっている千尋の構図は年が離れた兄弟みたいで微笑ましい。
「トオル、余計な事いわないでよ!此上、直ぐにこうやってからかってくるんだから」
少し膨れっ面の千尋。そういう顔も初めて見るのだが新鮮でそして、可愛い。
「ごめん」
一応謝るが見た事がない表情を見れてトオルは内心嬉しかった。
「神林くんはガールフレンドいるの?」
突然、此上からの質問に飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになった。
「い、いません!!」
慌てて否定する。なんで、慌てているのか自分でも分からないが、かなり慌てている。
「え?いないの?神林くん、可愛い顔してるから女の子に好かれそうなのに」
不思議そうに聞いてくる此上。
「か、可愛くないです!僕なんて地味だし」
否定するように勢い良く頭を振る。メガネが飛ぶんじゃないかってくらいに。
「そうかなあ?可愛いと思うけどなあ」
それでも突っ込んでくる此上に困り果てるトオル。
「か、可愛いっていうのは千尋とかミサキちゃんみたいな顔ですよ」
本当に千尋と姉のミサキは綺麗な顔立ちをしている。そして、此上もだ。
「なんか勿体ないね」と此上はトオルの前髪をスっと上げてネガメを取った。そして、「自覚なしっていうのは」と続けた。
自分の顔の近くに綺麗な顔がぼんやりとある。
「あー、此上さんそういうのセクハラだよ」
ミサキの声でトオルは慌てて此上の手からメガネを取って彼から離れた。
「此上、トオルにセクハラするならもう家に呼ばないからな」
千尋の怒った声。
「はいはい、すみませんね」
此上は千尋の横に座る。
「千尋の大事な友達だったな」
「そうだよ!」
2人の会話で改めて自分が彼の友達認定されている事に胸がドキドキと高鳴ってしまった。
◆◆◆◆
「また、来てね神林くん」
帰り道、送って貰う車の中で此上に言われた。
「はい」
返事をすると駅が見えてきた。
「家まで送るけど?」
「いえ、いいんです、買い物を頼まれてて」
トオルは千尋の豪邸の後にこじんまりとした自分の住む場所はなんだか恥ずかしくて見せられないと思ってしまった。
それは親に凄く失礼な事なのだが、どうしてもそこだけはダメだった。
「千尋、明日学校でね」
トオルは千尋にそう言って車を降りた。
「ねえ、今度、トオルんちの弟とかも会ってみたい」
「へ?」
「ダメ?」
千尋は思わず、トオルの服の裾を掴みオネダリするような顔で見つめる。
子犬が構って欲しいっていうそんな可愛い顔されたら「わ、分かった」って言うしかなかった。
「ほんと?やった!」
ニコッと可愛く笑う千尋。
こんな顔を見れるならば狭いあの部屋でもいいかな?と思ったトオルだった。
◆◆◆
で、次の日休みはトオルの家に千尋が行くことになってしまった。
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