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第9話

約束した時間って本当は半だったのかな?とトオルは一瞬考えてしまった。 千尋が車から降りてきて「早いね」と言ったから、やっぱり約束の時間は間違っていなかったみたいだ。 「千尋も早いね」 「だって道路混むでしょ?」 あ、なるほど……と思って、早く来て良かったなって思う。だって、千尋を待たせてしまうから。 「乗って」 千尋に車に案内されると長身で綺麗な顔立ちの男性が立っている。 お兄さんかな?と思った。でも、似ていない。 2人とも美形という共通点はあるけれどどのパーツも似ている部分がない。 「こんにちは。君が神林亨くん?よろしくね。僕は此上篤といいます」 トオルに微笑みかける男性は近くで見ると芸能人かな?って感じにカッコ良くて、こんなにカッコイイ男性を間近で見たのは初めてだった。 「こ、こんにちは」 トオルは緊張しながら頭を深々下げる。 「さ、乗って」 此上は後部座席のドアを開け、トオルを促す。それに従い軽く会釈をして乗り込んだ。 すると、千尋も後ろに乗ってきた。 「えっ?前じゃないの?」 「うん、だって、1人だと寂しいでしょ?」 ニコッと微笑む千尋。 助手席に乗ってしまうとトオルが孤立してもっと緊張すると思ったのかも知れない。優しいんだなって感動をしてしまった。 2人が乗り込むと此上も運転席へと座り、ドアを閉める。 ◆◆◆ 千尋の家は豪邸。 こんな家……芸能人かお金持ちしか住まないよね?えっ?じゃあ、千尋ってお金持ちのお家の子?とトオルは更に緊張してしまった。 「おかえり、ちーちゃん、此上さん」 これまたアイドルみたいな女の子が近付いてきた。 「ただいま」 千尋は女の子に返事をする。 あ、お姉さん? トオルはこの前の会話で彼に姉が居ると言っていたのを思い出した。 「こ、こんにちは」 トオルは女の子にも頭を下げる。 「きゃー!!ちーちゃんのお友達の神林くんでしょ?こんにちは、私、ミサキです」 ぺこりと頭を下げるミサキ。 自分と同じくらいか1つ上くらいかな?でも、学校でこんな美少女見かけない。 トオルは彼女がどこの学校なのか気になってしまった。 「同じ……学年ですか?学校では見かけないですよね?」 「えっ?あ、私……女子校だから」 なるほど、だからか。 お喋りをしながら家の中へと案内された。 「こっちが私の部屋でちーちゃんは隣りの部屋なの」 ミサキが指さした部屋は女の子の部屋らしく可愛い感じだった。 そして、学校の制服がかけられてるのが目に入った。 お嬢様学校で有名な所の制服だ。 そうだよな、お金持ちだもん……あれ? ミサキがお嬢様学校なのにどうして千尋は普通の学校に通っているのだろう?と謎になった。 「千尋……なんで普通の学校なの?お家大きいのに?」 普通に好奇心だった。何も考えずに思った事を言葉にした。 千尋は一瞬、黙った。 目を伏せた顔が学校ではあまり見た事がないくらいに大人びたような、何か聞いてはいけないような雰囲気が出てしまっているのでトオルはしまった!!と心で慌てた。 「だって、俺は普通だもん」 小さく呟いた声。聞いてはいけなかったのかな?と心配になる。 「さて、神林くんお腹空いてるだろ?料理をたくさん用意してるからこっちおいで、ほら、千尋も!」 此上がその雰囲気を壊してくれた。きっと、助け舟を出してくれたんだと思った。 「私もねケーキ焼いたんだ!チーズケーキ、神林くん好き ?」 ミサキは可愛く微笑む。その笑顔に少し照れながら「はい」と答えた。 連れて行かれた部屋はかなり広い。 自分の住んでいるアパートの部屋より広いんじゃ?なんて周りをキョロキョロしてしまった。 ケーキももちろんだけれど、沢山の料理がテーブルに並べてある。 「千尋もね、手伝ってくれたんだ」 此上の言葉で「えっ?これって作ったのは……」と聞くと「うん、私だね」とニコッと微笑む。 「えっ?シェフとかやってるんですか?」 「ううん、自分は千尋のボディガードなんだ」 「えっ!!」 ボディガード?えっ?テレビとか映画でよく見るあれ? 話の中にしか存在しないと思っていた職業の人が目の前に。 「ふふ、神林くん、目が大きいのが更に大きくなってるよ?」 優しく笑う此上。 ボディガードって怖いイメージがあるのに凄く優しい雰囲気と色気のある人だなってトオルは思った。

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