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第8話
「あ、あのさ、日曜日とか何してる?」
花の世話をしながら急に千尋がそんな事を言い出す。
「弟と遊んでいるかゲームしているか手伝いしているかかな?なんで?」
「弟?トオル、弟いるの?」
少し興味津々の千尋。
「うん、3人いるよ、1番下が4歳。そいつが遊んで遊んでってうるさい」
「へえ、いいなあ弟」
いいなあって言う事は弟は居ないって事になる。千尋の情報をひとつ、ゲット!!とトオルは心でニヤニヤ。
「きょ、兄弟いないの?」
「…………いるけど」
声のトーンが落ちたのでもしかして聞かれたくなかったのかと心配になる。
「姉がいる」
「お姉さん?そっか、お姉さんなら男同士の話とか出来ないね」
なんかわけのわからない事を自分でも言っていると思ったトオルだが言葉にしてしまったのだから仕方ない。
「男同士の話は此上とするもん」
此上?
知らない名前が出てきてトオルはキョトンとなる。
「此上?」
「その此上が俺に友達が出来ないとかうるさいからトオルの話したら連れて来いって言うんだ……だから日曜日大丈夫なら」
えっ?なんて言った?いま、なんて?
連れて来い?えっ?千尋の家に行けるの俺?
トオルの思考回路がストップしている。状況が把握できないのだ。
「だめ?」
顔を覗き込んできて首を傾げて可愛いオネダリポーズにトオルはハートを撃ち抜かれた。
「だだだ、大丈夫!!!全然暇だもん」
声が大きくなってしまう程にテンションが上がる。
「じゃあ、駅まで迎えに行くからえーと、11時とか平気?」
「うん!うん!大丈夫」
頭がクラっとするくらいに何度も頭を頷かせた。
「へへ、じゃあ、約束」
千尋はそれはそれは可愛らしく笑ったのだ。
なんだこの可愛い生き物は!!!
トオルはどんな可愛いアイドルよりも千尋が1番可愛いと思った。
◆◆◆
ドッキドキの日曜日はゆっくりとやってきた!感覚ではかなりゆっくりだった。直ぐにでも来て欲しいのに楽しみが待っていると時間がゆっくりとやってくる感覚に陥るのだ。
トオルは朝早く起きて髪型や服を何度もチェックした。その姿を見ていた両親と弟達から「あー、デートだ」とからかわれた。
「ちげーし!友達だし!」
否定すると「兄ちゃん顔赤い」と弟に突っ込まれ、「トオルにも彼女が」と両親には喜ばれた。
「だーかーら!!違うってば!バカじゃない?」
と必死こいて否定しまくった。よって、デートだと家族達は思い込んでしまった。
そして、駅までダッシュ。
待ち合わせ時間より30分早く着いてしまった。
どこで待っていよう?と考えていると「トオル」と名前を呼ばれた。
呼ばれた方を見ると車の助手席から手を振る千尋がいた。
嘘……30分も早いのに。
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