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チンコは何でも知ってる

 ケンジのチンコが喋った。一緒にいたアキもいつものクールな顔を乱し、間抜けに口が開きっぱなしになる。 「とりあえず風呂を出て、ちゃんと拭いて、服を着てからゆっくり話そうや。賢二郎、お前はすぐ風邪を引くんだからな!」 「え…へ⁉︎ い、いやいやいやいや!待って!ちょっと待って!この状況がわかんないんだけど!」 「いいからちゃっちゃと俺の言うことを聞け!」 「はい!」  何故かチンコに叱られてケンジは体をシャワーで流して急いで風呂をでた。呆気に取られたアキも興奮しきった己のペニスを鎮めるとケンジに続いて風呂から上がった。  ケンジはアキの家に置いてる洗濯されたトランクスを穿き、床に散らばった学校の制服を着て、アキはそのまま部屋着のTシャツとハーフパンツに着てリビングのソファに腰を落ち着けた。 「賢二郎、俺を出せ!」  布にこもった声でそう言われたがケンジは赤面するしかない。 「や、やだよ!チンコだけ出すなんて恥ずかしいじゃん!」 「息苦しいんだよ馬鹿野郎!顕孝でもいいから出しやがれ!」  そう命令されてアキは少しだけ嬉しそうにケンジのスラックスのジッパーをおろして、いつも愛してるケンジのペニスを取り出した。 「はぁあ…ったくよぉ、俺が喋るんだからこうやって出してくれねぇと困んだろーが」 「だから何でチンコが喋ってんだよ!」 「口答えすんな!このアホネコが!」  チンコは歯向かうケンジに怒る。するとチンコの色が本当に怒ったように紅潮し、ケンジが思わず「ヒィッ!」と怖がった。 「ねぇ、アキ…これ、夢だよね?ほっぺつねっても痛くないよねぇ?」  ケンジがほっぺを差し出すと、アキは容赦なくつねった。かなりの痛みがケンジに走る。そしてこれが現実なんだと理解する。 「アキ…いひゃい…」 「よく見ろケンジ…これは現実だ…」  つねった箇所をアキは優しくキスをして腰を抱いてなだめた。 「俺、何かの病気なのか?何も悪いことしてないのに…」 「別に賢二郎は健康体だ。モヤシ体力ってだけでな」  亀頭が少しうなだれて「やれやれ」と言うように揺れる。 「どういうことだ、チンさん」  アキはケンジを守るために、と、チンコを見つめてチンコと対話する。しかも「チンさん」と名付けて。 「何だその『チンさん』って!」  当然チンコはお怒りになり、今度はアキの方を向いて伸びた。 「チンコからおっさんの声がするからチンさん」 「顕孝ぁ、お前は昔っから澄ました顔してセンスがなさすぎんだよ!小学生の時に飼ってたハムスターに『伊藤さん』とかお歳暮から拝借してんじゃねぇ!」 「な…何でチンさんが伊藤さんのこと知ってんだよ…」 「伊藤さんが寿命で死んだ時に賢二郎の前でビービー泣いたことも知ってんだよ!」  チンコ…もとい、チンさんは幼馴染のケンジしか知らないアキの過去まで知り尽くしておりアキはサーっと血の気が引く。 「ね、ねぇ…チンさん…」 「お前までチンさんっていうのか!」  ケンジも何となくチンさんと呼んで、チンさんを見おろした。 「チンさんは…本当に俺、なの?」 「そうだよ、お前が生まれる時からずっとお前の股間にぶら下がってるぞ、賢二郎。お前のことなら俺はなぁんでも知ってる、俺とお前は一心同体だからな」  チンさんが偉そうに説明すると、アキの嫉妬心に火がついた。 「待って、ケンジの1番は俺だから。何今更ひょっこり出てきてさぁ、彼氏ヅラしてんじゃねーよ」 「お前はどこまで賢二郎バカなんだ顕孝」 「チンさんのくせに生意気なんだよ!」  意味不明の激昂をするアキはチンさんを思い切り握る。しかしチンさん=ケンジのチンコなので。 「いたああああああ!」 「く…くるし……」  痛みでチンさんは萎えた。そしてケンジも痛くて苦しい。ケンジの叫びでアキは気がついた。 「ご、ごめんな、ケンジ!」 「アキぃ…ひどいよ…」  とうとうケンジは我慢してた涙を流した。アキはケンジを優しく抱きしめて、慰めるようにチュッチュと唇にキスをする。 「ん…ンァ…」 「ケンジ………ごめんな」 「ったく、気をつけやがれ」  ケンジに甘く囁いたのに、返答したのはチンさんで一気にムードがぶち壊れた。 「あのさぁ、チンさん…空気読んで」 「空気読んだらまぁた賢二郎を抱き潰すんだろうが顕孝」  図星をつかれたアキは反論できなかった。 「さっきも言ったが、もう賢二郎のタマん中は空っぽなんだよ。精根尽き果ててんだ。それにまだ学校の課題も残ってるし、家に帰らねぇといけねぇ。お前は1人で寂しいからこうして賢二郎を拘束しちまってんだろうが、賢二郎には賢二郎の生活があんだよ、そんなことがわかんねぇガキでもねぇだろ」  チンさんの大正論説教が始まった。アキの心にぐさぐさと刺さると、ケンジを抱いてるアキの腕の力がかなり緩んだ。 「賢二郎がお前のことが大好きなのは信じろ。な、賢二郎?」 「へ⁉︎」  突然振られたケンジは顔が真っ赤になって慌てふためく。 「本当?ケンジは俺のこと、好き?」  アキの整った顔に覗き込まれてケンジはますます赤面する。 (そ、そんな急に…は、恥ずかしい!) 「ほら、ちゃんと言ってやれよ賢二郎」  何故かチンさんにも背中を押される。ケンジは控えめにコクンと頷いたがアキは不満だったみたいで、また耳元で囁かれる。 「ねぇ、ケンジ…俺のこと好きなの?言って?」  羞恥が極限に達したケンジは「もう!」と叫んでアキを突き飛ばした。急いで鞄を持って靴もかかとを踏んだままで、アキの部屋を走って出て行った。取り残されたアキはショックのあまりにその場で呆然としてしまった。 (無理無理無理無理!今更また好きとか…そういうの、恥ずかしいんだって!)  チンさんを仕舞うことも忘れてたケンジ。チンさんは自分からトランクスの中に引っ込み始終を見て考えた。 (賢二郎のやつ、男のくせにハッキリとモノが言えねぇんだよなぁ…ったく。このままじゃ、顕孝とも険悪になっちまうなぁ…しゃーねぇ、ここは俺が一肌脱ぐしかねぇな!)  ケンジは今日のことを必死に忘れようと、着替えて夕飯も食べずに自室にこもり課題をこなし、心頭滅却を唱えながら眠りについた。

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