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おはようチンさん

 翌朝、午前6時半にセットしているアラームが鳴るとケンジはモゾモゾと目を覚ます。寝返りをうつと股に擦れて分かる生理現象。 (あー…いっくらセックスで搾り取られても朝勃ちはするんだよなぁ…)  硬くなったチンコを少し落ち着かせてから起き上がってトイレに行くのがケンジの一日の始まりだった。いつものように枕元のスマホをダラダラといじりながらチンコが萎えるのを待った。 「――――――――――――――――――」  布団の中からこもったおっさんの声がする。聞き覚えのあるおっさんの声。  スマホをいじっていた手を止めてケンジは上半身を起こして掛け布団をめくった。すると寝巻きのタオル地ハーフパンツはテントを張っており、かつ、ウネウネと動いている。  ケンジは予想したくない予想をし、恐る恐るとトランクスごと下半身の衣類をめくりチンコを取り出した。 「おはようさん、なーにグズグズしてんだ。とっとと小便出さねーと膀胱(ぼうこう)炎になっちまうぞ」  一晩経てばきっと治ると祈っていたのに、不幸にも昨日の悪夢は続いていた。チンさんは蹴伸び…チン伸びをして爽やかな朝の空気を吸っているようだ。 「ほら、とっととトイレ行って小便出せよ」 「ああああああああああああああああああああああああああ!」  ケンジの咆哮は家中に響いた。  ドンドンドン 「ケンジ?どうしたの?」  心配したらしい母がケンジの部屋のドアを叩いて今にも入ろうとしていた。なのでケンジは寝起きの脳みそをフル回転させて母の侵入を阻止する。 「だ!大丈夫!む、虫が窓から入ってきただけだから!大きい声出してごめんなさい!」 「そう?あんまり朝から大きな声出さないでね、ご近所さんにも迷惑だから」 「う、うん」  母の足音がトントンと遠ざかると、「はぁ」と安心して肩を落とした。 「チンさん…まだいたのかよぉ…」 「まだいたのかよぉ、とは失礼だな。俺はお前と一心同体だろうが」 「いや、そうだけど…」 「早くトイレいかねぇと、漏らしちまうぞ。もう膀胱はほぼ限界だ」 「わかったよ!」  チンさんに催促されてケンジは急いでトイレに入った。いつも通りに膀胱を綺麗さっぱり空っぽにしてスッキリすれば、自室に戻って制服に着替える。母が綺麗に洗濯してアイロンをかけてくれたライトブルーの半袖ワイシャツ、紺色のスラックス、薄いレモン色のサマーニットベストを上に着ると完了。昨夜のうちの用意していたスクールバッグを手にしてダイニングキッチンへ向かった。 「おはよう」 「ケンジ、夕飯がいらないならきちんと連絡しなさい」  食卓に着くと早速母から昨夜の行動を(とが)められた。ごもっともなことだったのでケンジは素直に「はい」と返事をした。 「ケンジ、部活も入ってないのに帰るのが遅すぎじゃないか?」 「あ…それは、アキの家で課題とかしてるから」 「アキくんも1人で大変なんだから遅くまで入り浸って迷惑をかけるんじゃないわよ」 「はい…」 (誘ってくるのはアキの方で…ちょっと俺も体力ついていかなくて迷惑なんだけど)  そんな不満を口には出さずに、少しだけふてくされた態度のまま素早く朝食を摂る。  顔を洗って、歯を磨いて、髪を整髪剤で整えて、入念に鏡でチェックすると時間は午前7時30分になろうとしていた。スクールバッグを持ってぶっきらぼうに「行ってきます」と言って家を出る。 「おはよう、ケンジ」 「あ…おはよう、アキ」  玄関を出るといつものようにアキが待っていた。ケンジは昨日のことがあったので今朝はこうして自分を待ってくれていないのではと内心不安だった。だが変わらずに待ってくれていたことで胸を撫で下ろした。 「よぉ、顕孝、おはようさん」 「え? え⁉︎」 「アキ?」  チンさんの声が鮮明に聞こえたアキはまずケンジの股間に目をやった。しかしケンジの社会の窓はきっちり閉じられている。だがまだ信じられずにアキはしゃがんでケンジの股間を凝視した。そのアキの行動にケンジは恥ずかしくなり怒って股間を隠す。 「アキ!なんでそんなとこまじまじと見るんだよ!恥ずかしいじゃん!」 「いや…だって、はっきりとチンさんの声が聞こえたんだよ」 「えぇ…?」 「顕孝、まぁ落ち着け」 「今聞こえた!チンさんの声聞こえた!」 「アキ!声が大きいよ!」 「賢二郎には聞こえんのか?おーい、賢二郎」 「え…何?」  ケンジには微かにチンさんの声が聞こえた。だが今朝実際に対話したほどの音量はなく、よくよく神経を研ぎ澄まさないと聞き取れなかった。 「聞こえるけど、ちょっとしか聞こえない…」 「やっぱりかぁ…」 「というかなんで俺にはこんなはっきり聞こえるんだ…」  顕孝はケンジの股間に向かって尋ねた。するとチンさんは気まずそうに言葉を詰まらせながら答える。 「実は俺も昨夜(ゆうべ)気がついたんだ…賢二郎の精液を体内に摂取した奴にはテレパシーが送れるらしい」 「はぁ⁉︎」  あまりに予想外すぎる答えにアキは昨日に続き開いた口が塞がらなくなった。ケンジにはよく聞こえずに頭の中はハテナだらけだ。 「待て、何でケンジには聞こえないんだよ」 「ケンジはごく少量しか口から摂取してねーだろ」  ポイントは口からごっくんと精液を飲んだか否からしい。ケンジが口から己の精液を摂取する方法は、フェラチオしてごっくんしたアキの唇とキスをする。ほぼ毎日摂取ごっくんしているアキはチンさんのテレパシーをバリバリ受信できるということだった。 「なるほど」 「え、何を納得したの⁉︎」 「ケンジ…俺はチンさんと見えない糸で繋がってる、つまり、ケンジとも見えない糸で繋がってるんだ…嬉しいよ」  アキに甘くそう言われて抱きしめられたが、ケンジはわけがわからなかった。 「おいおい、こんなとこでイチャついてたら近所の人に見られちまうぞ」 「そうだな…ケンジ、行こうか」 「うん…」  いつものようにアキに手を引かれてエスコートされて歩き出す。だがケンジが思った。 (アキ…何と話してるの?怖いんだけど…)

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