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第11話

「じゃあ、どんな奴がタイプな訳?」 「どんな奴?」 翔平に聞かれて、改めて考えた。 俺ってどんな奴がタイプなんだっけ? ビールの泡を見ながら考え込んだ。長いこと恋愛していないから、咄嗟に出てこない。 でもとりあえず、これだけは言える。 「真面目で誠実で、俺だけを見てくれて……イケメンじゃない人っ!」 「……イケメンじゃない人?」 翔平は焼き鳥に手を伸ばして、片手で串を持ちながら首を傾げた。 「て事は、俺ってイケメンって事ー?」 へへへ〜と顔を赤くして嬉しそうに笑った。 もう酔いが回っているらしい。 「うん。翔平はカッコええよ。それに見た目チャラそうやし、好きにならんかった。あ、友達としては好きやけどな」 「はぁ?俺、見た目チャラそうにみえるけど、案外しっかりしてんだよ?さとみちゃん愛してるし」 「知っとるよ。翔平はちゃんとやっとるよ」 「修介ってB専なの?なんかイケメンに恨みでもあるような言い方だね」 「うん……まぁちょっと苦い思い出が……」 俺は洗いざらい、翔平に話した。 瞬くんと付き合っていた事。エッチが痛くて衝撃的だった事。三人同時に付き合っていて、俺は二番目だった事。 話している最中、翔平の表情がコロコロ変わって面白かった。驚いたり、眉根を寄せたり、声を出して笑ったり。それが可笑しくて、お陰で深刻にならずにどんどん話を進められた。 「ふ〜ん。なんかすげぇな、その瞬って奴」 「だからもう決めたんよ。あんな風に格好ええ人は絶対いろんな奴が勝手に寄ってくんねん。格好良くなくてええし、人気者や無くてもええから、ちゃんと俺だけと付きおうてくれる人がええ」 「ヘェ〜……」 翔平は頬杖をついて、先程頼んだレモンサワーのグラスにマドラーを突っ込んで回しながら、カラカラと音を鳴らす氷を見つめて何か考えていた。 しばらく俺もそのグラスに視線を送っていると、急に翔平の手の動きが止まった。 「なんか、瞬がイケメンだから遊ばれたって言ってるけど、遊んでた瞬がたまたまイケメンだったって話なんじゃねーの?」 「え?」 「世の中には、イケメンでも真面目で誠実な奴なんていっぱいいるぜ?」 「ホンマ?! 俺男子校やったけど、やっぱ恰好ええ奴は自分のカッコ良さを売りにしてるっていうか……冴えない奴見下したり、調子に乗ったりしてて……」 いつでも、目立つ奴は格好良かった。 背が高くて、明るくて、自信に満ち溢れていて。 俺には無いものを沢山持っていた。 そんな人達になりたいって、憧れていた。だから瞬くんの事を好きになったのかもしれない。 「修介、本当は面喰いなんじゃない?」 「へっ?!」 「瞬って奴も、顔から入ったっしょ?正直」 「……」 はい。その通りです。 「だから本音は、恰好良くて、自分だけを見てくれる人、でしょ?」 「そ、そうかもしれんけど、そんな奴おらんよ……カッコええ奴は嫌でもモテてしまう訳やし……」 「俺、知ってるよー? 超絶イケメンでモテまくってるけど、真面目で誠実で、フラフラしないでちゃんと一人だけ見てくれる奴」 「ええっ? そんな奴おるん?」 「うん。藤澤 景(ふじさわ けい)って知ってる?」

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