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第10話
それを聞いた瞬間、翔平の手先がピタッと止まった。
俺は手に汗を握る。
やっぱ、引いたよね。
でも翔平はパッと顔を上げて素っ頓狂な声を出した。
「ヘェー!それで?」
俺はズッコケそうになった。
その間抜けな返事。どうにかならないものか。
「それで?じゃあらへんよ!意味分かってる?」
「え?意味?分かるけど……好きな男がいるから、協力しろって事?」
「ち、違くてっ、俺は女やなくて男が好きなんだって話!ただそれだけ!」
「ああ、そゆ事。はいはい、了解でーす」
そう言うと再度枝豆を剥き始めた。
分かってるのか分かってないのか、その適当な返事を辞めなさいと店長に怒られていたはずだ。
「……驚かへんの?」
「え?うん、別に。だって恋愛の形なんて自由じゃん。俺、今までいろんな人に会って来たけど、マジで十人十色だよ。俺がとやかく言うアレじゃ無いし、修介は修介だし」
大学でつるんでいる友達と同じ事を言われて、俺は不覚にも目頭が熱くなった。
こんなに良い友達と出会えて、本当に良かった。
「はっ!ちょっと待って!」
翔平は何かに気付いたように枝豆を放り投げた。
「ごめん。俺はさとみちゃん一筋だから。修介の気持ちには応えられな」
「大丈夫や。翔平の事はタイプじゃあらへん」
「あ、そうなの?彼女元気?って聞いて来たから、嫉妬してんのかと思ってた」
「してへんしてへん」
俺の告白を聞いて、翔平が今まで会った中で一番動揺しなかった。
やっぱり翔平ってなんだか変な奴だけどいい奴。そう思った。
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