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第9話

夏休みに入ると、ますますバイトのシフトが増えて、翔平と一緒にいる時間が多くなった。 「修介ー。今日給料日だろ?パーっと飲みに行こうぜ!」 「パーっと?行っちゃう?」 「……イッちゃおう?」 「バカ! じゃあ、終わったら待ってるからな」 「ほーい」 翔平とバイト終わりにご飯を食べに行ったり、俺の家に泊まりに来たりする事も多くなった。 そろそろ、翔平にも言っておこうかな。 そう思えていたから、今日カミングアウトする事にした。 きっと、驚きのあまり言葉を失うんだろうけど。 俺たちはバイトを終えて、その足で近くのビルにの中にある飲み屋に入った。 店内は薄暗く、個室もあるから気に入っている。値段が少々高めなのがネックだけど。 ガヤガヤと賑やかな声が店内に響く中、個室に入った俺たちはお互いビールを頼んで乾杯をした。 「はぁ〜!バイト上がりのビールは最高っすねぇ!」 「ふふっ、そやねぇ」 お通しに箸をつけながら、こっそり翔平の顔を覗き込んだ。 それに気付いた翔平はフニャッと顔を崩した。 「ん、何?なんで見てんの?」 「あっ、別に……」 (いきなり言うのも変だと思うけど、ズルズル引き伸ばしても言いづらくなってしまうんよなぁ) 「……あ、翔平、彼女元気?」 つい話題を逸らしてしまう。翔平は目を細めてニヤニヤし出した。 「元気だよ〜。超可愛いよ〜。最高〜」 翔平の彼女への溺愛ぶりは前からだ。 初エッチしたというのを、初対面の俺にいきなり言うか?普通。 「んで、修介は?彼女出来た?」 「えっ?!あ……いや……」 「なんで? こっち来てから作って無いんでしょー?お前めっちゃモテそうじゃん。綺麗な顔してるし、その関西弁でなんとかなんないの?」 「なんとかって……」 言うなら今しか無いと思った。 俺は手に持っていたグラスをテーブルの上に置くと、正座をして体制を整えた。 「あ、あんなぁ翔平! 俺、言っておきたい事あんねんけど!」 「うん、何ー?」 翔平は呑気に枝豆の皮をむいて中身を出していた。 「俺、実は男が好きやねん!」

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