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第21話

景と予定があったのは、電話から二週間後の事だった。 俺は電車に揺られて都内の方へと向かった。 景は先に店に入ってくれているらしい。 飲み屋で話した時に、景がよく行くお店に行ってみたいと言ったのを覚えていてくれたのか、その店を予約してくれていた。 そこは懐石料理中心の和食のお店だ。 エレベーターに乗り込み、二階で扉が開くと、大きな梅の木が目に飛び込んできた。 自分がバイトしている居酒屋の雰囲気とはまるで正反対で、店員さんも店内も清潔感があって、小綺麗だが落ち着ける雰囲気だ。 こんな場所、景に誘われなかったら一生来なかったかもしれない。 (こんな洒落たお店で食べるんか?なんや緊張すんなぁ……) 店員さんに促されて靴を脱ぎ、その後について行くと、角を曲がって一番奥の部屋の前で立ち止まった。 「何かございましたらお申し付け下さいませ」 「あっ、はい、ありがとうございますっ」 お辞儀される店員さんになんだか申し訳なくて、俺も何度も頭を下げる。 まるで面接に来たみたいに、心臓がドキドキしていた。 俺は意を決して襖をゆっくりと横に引いた。 「あ、久しぶり。迷わなかった?」 そこには、約二カ月半ぶりに見る景がいた。 景はテーブルに肘をついて、右手でひらひらと手を振って、タバコを吸っていた。 出会った夏の頃とはまた雰囲気が変わって、髪も耳の下あたりまで伸びて、柔らかそうな黒の革ジャンを羽織っている。 案内された部屋は、九十度の角度で向かい合える掘りごたつの個室になっていた。 この座り方は、相手と親密になりたいという気持ちの表れだと聞いたことがある。 まさか偶然だろうなと思いながら、彼の斜め前に腰を下ろした。

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