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第113話

祐也はさっきの俺たちのやり取りを見て、ますます前のめりになって早く事情を説明しろとせがんできたから、全員で揃って乾杯をした後にこっそり事の経緯を語った。 ここにいるみんなは、俺と瞬くんが高校の頃付き合っていたっていう事は知っている。 祐也は相槌を打ちながら俺の話を静かに聞いていて、俺が景と知り合いだと言ったら疑いもせずすぐに信じてくれた。 「じゃあ、藤澤 景の事はやめて、重村と付き合おうと思うてんの?」 「うん。まだ景の事完全には忘れられてへんから、そのへんは聞いてみようかと思っとる」 「へぇ……で、藤澤 景には告ったんか?」 「いや、告白はしてへんけど」 あの時危うく言いそうになってしまい、もしかしたら鋭い景にはバレていたかもしれないけれど、そんなのもう今更関係無い。 「え?してへんの?すればええやん。話聞いてると、藤澤 景も修介の事好きやと思うけど」 「いや、好きって友達としてやろ?あっちはノンケやし、俺とおんなじ気持ちになる事なんて100パー無いし、もう諦めたんよ」 「いやー修介、よぉ考えや? いくら修介の事が心配やからって、わざわざ車で修介んとこまで来て、ただの友達にディープキスなんか普通せーへんやろ!絶対、藤澤 景も修介の事そういう目で見てんで?」 ギョッとした。 いくらみんなが盛り上がってるからと言って、大声でディープキスとか言うなや!と思ってふと周りを見渡すと、遠くに座る瞬くんとたまたま目が合ってしまい、直ぐに慌てて目を逸らした。 でも祐也のその言葉に、ちょっとだけ心が弾んだ。 いくらなんでも、友達だからキスするなんて普通無いよな、とは俺もなんとなく思っていたから。 でも、もう自惚れて恥をかきたくないという気持ちが勝った。 「景ってちょっと変わってるんよ、芸能人やからか知らんけど。ほんまに真面目で、曲がった事や嘘が大嫌いで。なんでキスなんかしてきたんかは分からんけど、後先考えてない俺に腹立てて咄嗟にやってしまったん違うかな?」 「いやー、それにしてもせぇへんとは思うけどな……」 「もうええねん。景とはもう絶交して連絡取らないって決めたし、早く忘れたいんよ」 まぁ、修介がそこまでいうならなぁ、と祐也は納得いっていないように呟いてから日本酒を飲んだから、俺も一口ビールを飲むと、また瞬くんがこちらを見ているのに気がついた。 微笑んではいるけど、何処か儚げな様子だった。 もしかして、返事を待っているのかも? 帰る時に瞬くんに声を掛けようと思った。

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