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第143話

景は今なんて言った? 僕の事が、好きなくせに? ……え?やっぱり、バレている? 「えっと〜、ハハ、景、何言うて……」 「僕の事が好きなんでしょう?はっきり言いなよ!」 景は顔を傾けて俺の顔を覗き込む。 またこの間のように責められているようだけど、この間とは随分と状況が違う。 フツフツと湧いてきたのは、怒りよりも羞恥だ。 その真っ直ぐで大きな目と目を合わせると、一気に顔から耳までボッと火がつけられたように熱くなった。 熱くなり過ぎて今すぐ冷却シートが欲しい。すぐに意味をなさなくなる自信があるけど。 「なっ、ば、馬鹿やないの?!俺、そんな事一言も言うてへんやろが!」 「俺ずっと景の事が...…なんてこの間あんな言い方されて、気付かない方がおかしいでしょ!何年俳優業やってると思ってるんだよ!」 「知らんわ!ていうか自分、相当な自惚れ屋やで!そんな事言うてて恥ずかしくないんかっ?」 「恥ずかしくないし、自惚れじゃないよ!君は僕の事が好きなんだよ!ちゃんと言ってよ、僕の事どう思ってるの!」 何?これ。 何で景はそんな事を言わせようとしているの? やっぱり景は超が付くほどの変人だ。 俺は羞恥と驚きで訳が分からなくて、顔と体を震わせながら呟いた。 「別にッ……普通……!」 かろうじてそう出たけど、そんなの景に通用する訳も無く。 「普通って何だよ!なんで君はそんなに天の邪鬼なの!僕に触るなって言ったくせにやっぱり触ってもいいって言うし、会えて良かったって言ってくれたかと思ったら会わなきゃ良かったって言うし、お陰で仕事中でも考え込んじゃうし、僕をいちいち一喜一憂させて、翻弄して振り回すような人なんて君ぐらいだね!」 景は早口で俺を責め立てた。 また喧嘩か? もう、振られても何でもどうでも良くなった。 「何キレてるんよっ?言うとくけどなぁ、景が悪いんやで?そんなイケメンなのに優しくて性格もええってどういう事やねん!そんなん誰でも好きになるに決まっとるやろうが!」 「顔の事は関係無いでしょう!君の方が悪いよ、本当の気持ちは黙ったままで、僕にずっと隠してて!僕に好きだっていう気持ちをちゃんと素直に伝えてれば、あいつとキスする事なんて無かったのに!」 「はぁ?」 景はいつも訳分からない事を言う。 何で俺が悪い事になってるの? 「何やねんそれ。言うとれば何か変わったんか?」 「変わったよ!僕だってちゃんと君の事が好きなんだよ!」 「それは何回も聞いとるから知っとるわ!はじめの頃からそう言っとったやないか!」 「それはそうなんだけど、やっと気付いたんだよ!君は僕にとって凄く大切な人なんだよ!」 「せやから知っとるわ!俺が女の子やったら彼女にしてたくらい好きなんやろ?彼女にって、そんなん無理やけどな!」 「違う、違うんだよ……どう言えば分かるんだ……」 景はかぶりを振り続け、目を閉じてから片方の指先でこめかみを押さえながら何か考えていた。その体勢から動かないまま、景はハッキリと告げた。 「愛してるんだよ!君の事を!」 ── ん?

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