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第144話

景は今なんて言った? 愛してるんだよ、君の事を? え?何、どういう事? アイシテル? I,siteru? 愛してるって単語、どういう意味だったっけ? それくらい、俺は頭がフリーズしてしまった。 ついでに口はあんぐりと半開きにした状態で固まってしまった。 景はゆっくりと体を起こしてから、また曇りない眼差しでこちらを見据えた。 「ごめん。いきなり変な事言って。あいつとキスしたって聞いたら、なんだか興奮しちゃって責め立てちゃった。修介、これからする僕の話よく聞いてくれる? あぁ、とりあえず車ちゃんと端に寄せるね」 景は我に返ったように落ち着いた口調になって、車を走らせて周りに迷惑がかからないところに止めてからエンジンを切った。 途端にシン...と車内が静まり返り、また緊張感が増してくる。 俺は未だ呆然としながら、ただ景の横顔をジッと見ていた。 景はそんな俺をまたまっすぐ見つめながらゆっくりと話し始めた。 「順番を間違えた。まず謝らないと。ごめん、あの日、無理やりキスなんかして」 「……」 「何であんな事をしたのか、あの時自分でも理解出来なかったんだ。気付いた時にはもう、唇を奪っていて。それで修介が泣いて、大変な事をしたって。でも僕は弱いから謝りもせずに強がって。馬鹿だった。怖い思いさせて、本当にごめん。あと手首もかなり強く掴んでた筈だから、痛かったと思うし……大丈夫だった?跡に残ったりとか」 「あ、うん、別に大丈夫やったけど……」 「ごめん本当に。あの日から、修介に言われた台詞が頭の中から離れなかったんだ。僕の事はもう信じてないとか、会わなきゃ良かったって言われた事が。嫌われるような事をしたし、このまま会わなければいいんだと何度も思ったよ。でも無理だった。ようやく気付いたんだ。何故僕があんなに怒りに満ちていたのか。君が、誰かのものになるなんて、耐えられなかったんだ」 また、そんな風な言い方。 もう騙されない。自惚れない。 「君が笑う度、泣く度、僕の心はいつもそれに踊らされて、翻弄されたんだ。君が笑えば暖かい気持ちになれたし、泣いたり怒ったりすれば、胸がズキズキと痛くなるし。僕の心の中にはいつも君がいたんだよ」 「……」 「女の子だったら彼女にしてたなんて、はじめは本当にそう思っていたよ。でもね、今はもうそんな気持ちは持ってない。女とか男とか関係なく、君の側にいたい。修介という存在は、もう僕の中からこの先消え去る事は絶対に無いんだ。だから、君に選んで欲しい」

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