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第145話

胸がドキン、となった。 選ぶって、何を? 声には出してないけど、景は俺のキョトンとする顔を見て、俺が何が言いたいのか分かったようだった。 「選ぶって、これからの事。もう僕らは普通の友達には戻れない。君がもし、僕の事を受け入れてくれるんだったら、これからずっと隣にいて欲しい。無理だったら、もうこれっきりにする。連絡先も思い出も全部消去して、修介には二度と会わないよ」 どういう事? 隣にいて欲しいって、どういう意味で? また呆然としていると、景はニコッとしてから困ったように笑った。 「僕は芸能人だから。もしかしたら君を苦しめる事になるかもしれない。急に会いたくなっても会えないかもしれないし、外を歩くにしても、好奇の目にさらされて、堂々としていられないかもしれないから、寂しい思いをさせるかもしれない。マスコミに追いかけ回されて、例えば変な記事を書かれて、修介が傷つく事になるかもしれない。きっと想像できないような障害が沢山あるんだと思う。それでも、乗り越えられる?」 俺は、今、何の話をされているんだろうか。 馬鹿だから、何にも分からない。 でも景は、いつだって自分の事より人の事を考える。 俺は震える手の平を額に当てながら、フツフツとこみ上げてくる何かを必死で抑えながら震える声を発した。 「あの、景、もっと分かりやすく言うてよ……アホな俺にも分かるように」 「だから、僕は君に一世一代の恋をしたんだよ。友達としてじゃなくて、恋愛って意味で」 「……」 あれ、なんだろう。何かがこみ上げてくる。 涙が、出てくる。 じわじわと暖かいものが目の周りを刺激して、またあの日みたいに、景の顔がぼやけて見えなくなっていった。 「選んでなんて言っておきながらおこがましいけど、僕は君とだったら乗り越えられると思ってるよ。全力で君を守るし、嫌な思いは絶対させない。僕の隣にいて欲しいんだ。僕の事、受け入れてもらえるかな?」 景は、嘘は吐かない。ストレートで直球だ。 だから素直に心に染み込んでくるんだ。 鷹揚で暖かい彼の言葉に、俺はとうとう我慢できずにポロポロと涙を零した。 瞬きする度に、面白いほど雫が周りに弾けた。

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