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第168話
「えっ!」
いつもと違っていた事その3。
景がバイト先に現れた。
それも、思い切り不穏なオーラを出しながら。
でも俺はこんなところに景がいる事が嬉しくて、不機嫌な理由なんてよく考えもせずに運転席に座る景の元へ笑顔で走り寄って中を覗き込んだ。
「景、どうしたんよっ?もしかして迎えに来てくれたんっ?」
「うん。仕事、予定より随分と早く終わって料理も作り終えたから、来てみようかなと思って」
「わぁー、めっちゃ嬉しい!乗ってええっ?」
「……乗れば?」
景は相変わらず目を細めながら俺を見ている。
あれ、何か怒ってる?
もしかして、随分と待たせちゃったのかな?
謝らなくちゃと思いながらも気分はルンルンで、助手席側にまわりドアを開けて中に入った。
「なんや景、悪いなぁいつも。来てくれるんやったら俺ん家でも良かったんに。あ、いま部屋汚いから無理やけど。嬉しいで?ありがとう、ホンマに」
「いや、別にいいんだけどさ。そんな事より修介、僕のこの状況を見て、何か感じる事は無いの?」
景はハンドルに肘を乗せて頬杖をつき、俺の事を冷たい目で見つめてくる。
「あ、ごめんごめん。悪かったなぁ、待たせてしもうて」
「いやいや、待ってない。10分くらいしか」
あれ?じゃあ何だろう。
俺は景にじっと睨まれながらも考えるけど分からなくて、数打ちゃ当たる方式で当てずっぽうで言ってみた。
「あ、もしかして、仕事で嫌な事あったん?」
「いや、無いよ。むしろ絶好調」
「うーん……じゃあ、料理うまく行かへんかったん? 俺、景が作ってくれたんやったら失敗したとしても何でも嬉しいで?」
「いや、それも完璧に出来たから」
「……来る途中、車で煽られた?」
「煽られてない」
「え〜っ?じゃあ何やの〜?」
笑いながら腕組みをして首をかしげると、景は片眉を上げて反応してから、呆れたようにふぅ、と溜息をついた。
「修介の鈍感力とか天然なところは、未知過ぎて逆に見習いたいよ」
「はっ?!それって馬鹿にしてるんかっ?」
「今の女の子、誰?」
そう言われてようやく理解した。
景はさっき俺が莉奈と話していたのを見てたんだ。
顔がポッと火照って赤く染まった。
《僕、こう見えて結構嫉妬深いからね》
不敵な笑みを浮かべながら言われたのを思い出した。
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