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第170話
景の綺麗に澄んだ目を見つめながら、俺は考えた。
うーん、嫉妬してくれてるんだから、あんな風に話すな、とかかな?
「ごめんなぁ、でも誤解せんといて欲しいんやけど、ニヤニヤしてたんはあの子といたからやないで?だって俺、女の子に興味ないし……これから景と会えるんだと思うと、う、嬉しくて」
は、恥ずかしい。
けど、珍しく素直に言ってみた。
景もきっとこんな俺を見て許してくれるだろう。
しかし景は、俺の腕を掴んでいる手の力をますます強めたから、的外れな事を言ってしまったのかと思って焦ってしまう。
「僕はもう、大分修介の事が好きみたいで……」
熱い溜息を吐いた後に、フッと目線を外して景はポツリと呟く。
え、景、どうしたの?
切ないような、余裕が無いような顔をしていたから胸が締め付けられる。
「最近、おかしいんだ僕。会えない間、ずっと君の事を考えていて」
「えっ!」
「この間食事した時に、修介が安易にもっと触れていいだなんて言うから悪いんだよ。あの日から、思うようになったんだ。今よりも、もっと触れてみたいって」
触れてみたいって、どういう意味だろう。
もしかして、セッ……
「修介が女の子と話してるのを見ただけなのに、こんな風になるなんて自分でも子供だと思うけど、止められないんだ。早く、僕の事しか見られなくなればいいのにって」
やばい。心臓がギュッと思いきり掴まれたみたいに痛くなる。ドキドキと鳴るそれはうるさくて、景にまで聞こえてしまいそうだ。
「今日泊まっていいからって言ったのは、美味しいワインも買ったし、君とお酒飲んでゆっくり会話ができればいいなと思ったからなんだ。だって付き合ってまだ日が浅いし、君の事がすごく大切で大事だし、迂闊に手なんて出せないよ。頭では分かってるんだけど、心はコントロール出来なくて。さっき考えてたのはね……」
景は俺の頭をわしゃわしゃと撫で回してから、フッと微笑んで椅子に背をつけてもたれ掛かった。
「いくら鈍すぎる修介でも、それくらい分かるでしょう?」
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