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第189話
寝返りをして、お腹の奥に痛みを感じて目が覚めた。
カーテンの隙間から陽の光が漏れていた。
どうやら朝みたい。
脚やら腰が鉛のように重かったけど、ゆっくりと上半身を起こした。
どうやら俺は、達した後、そのまま眠ってしまったようだ。
あぁ、本当は起きていて、甘酸っぱいひと時を景と過ごしたかったのに。
掛けられていたフワフワの毛布をめくってみる。
裸のままで何も身につけていなかったけど、色々と汚れていたはずなのに、すっかり綺麗にされていた。
広い寝室の部屋を見渡すけど、景はいない。
頭がしっかり働かなくて、重い瞼をパチパチとさせ無理やり目覚めようとするけど、瞼が重力に勝てずに、そのまま眼を閉じた。
《愛してる……!》
途端、昨夜の行為がフラッシュバックされて、頭が一気に冴えて目を見開いた。
俺、景と最後までちゃんと出来たんだ。
景のいやらしい手つきや熱っぽい目、そして自らの喘ぎ声を思い出してしまい、顔が熱くなって、どうしようもなく、両手で顔を覆った。
(はぁ〜。俺、めっちゃ恥ずい事いろいろとしでかしてしまった……)
景とどんな顔して会えばええんやろ……そう思いながらもベッドから降りた。
見ると、俺の服がベットの隅にきれいに畳まれて置かれていたからそれに着替えた。
廊下を歩いて、リビングの方へ向かい、ゆっくりドアノブを押して部屋を覗くと、L字型に置かれたソファーでタバコを吸っている景の後ろ姿が見えた。
その長い足を組みながら、開け放ったカーテンの向こう側に広がる街並みを見ているようだった。
何故か忍び足で部屋に入り、後ろ手でドアを閉めた時にパタンと少しだけ音が鳴ったけど、景は俺に気付かない。
近づいていくと、タバコを挟む二本の長い指が目に止まり、昨夜の出来事がまた思い出されて恥ずかしくなったけど、緊張気味に話しかけた。
「景」
「……あ、起きた?おはよう」
俺を振り返った景はすぐに笑ってくれて安心した。それで緊張が解けて顔がほころぶ。
いつもの景だ。
「おはよう……」
「ちゃんと寝れた?」
「うん。早起きなんね、景は」
「いや、修介がヨダレたらしながらイビキかいて寝てたから、それで眠れなくて」
「えっ!ごめん!ほんまに!?」
「うそ〜」
「なっ……!」
「……こっち来て」
景はタバコを灰皿に押し付けると、ソファーの真ん中に座り直して、どうぞと手を差し出してくれたから隣に座った。
「身体、平気?」
景が俺の肩を撫でながら顔を覗き込んでくる。
恥ずかしくてとても直視出来ないから、俯いたままちょっとだけ頷いた。
「あ、うん。大丈夫。ちょっと腰が痛いけど」
「ごめんね。修介の乱れてる姿見てたら、抑え効かなくなっちゃって。あんな修介、初めて見れたから嬉しくて」
「あはは……」
お願いだからこれ以上は言わないで、と思いながら顔を左手で覆った。
「コーヒー飲む?」
「あ、じゃあ、うん」
景は嬉しそうに俺の頭を撫でて、髪を梳いてからソファーから立ち上がった。
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