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第190話
キッチンで準備をする景を見てから、窓の方に視線を向けた。
鳥の囀りがする。
見ると、ベランダに小さな鳥が二羽行ったり来たりしていた。
景はさっきこれを見てたのかな。
しばらくボーっと目で追っていた。
「はい。ちょっと熱いから気を付けてね」
「あ、ありがと」
カップの淵を持った景の手は少し血管が浮き出ていて、この手が俺を……とドキドキしながらそれを受け取った。
景も自分の分を用意したみたいで、隣に座って直ぐにコーヒーを飲み始めたから、よく考えもせずに俺もそれを見ていきなり口を付けて液体を喉の奥へと流し込む。
激しく後悔した。
「あっつ!!」
唇と舌がヒリヒリして、涙目になった。
そうだ。俺は猫舌だった。
景は俺の慌てる姿を見て、目を細めて呆れている。
「だから、熱いからって言ったでしょう……ほんとに天然だよね」
「だって、景、普通に飲んどるから、そんなでもないと思ったんやけどっ」
「僕と修介とじゃあ身体の作りが違うの」
「あ、それ、聞き捨てならへんな。まるで俺が小さいみたいに言うてるけど」
「そんな事言ってないし……実際、僕よりも遥かに背低いでしょ」
「は?」
わざとなのかいつも通りなのか、些細な事で憎まれ口を叩く。
俺は多分、照れ隠しのつもりだと思ってる。
一通り言い合ったところで、お互い黙り込んでしまった。
また部屋がしんとなるけど、別に気になんてならなかった。
昨日の出来事を思い出していて、美味しいコーヒーを飲みながら幸せな気分だった。
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