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第206話 side景

桜理と二人きりになったら、ようやく静かになった。 紫煙をくゆらせながら、修介の事を考えてみた。 確かに、関西弁で今度、卑猥な言葉を言わせてみたいかもな…と僕の本能がそう思わせてしまった。 少しニヤついてしまっていると、桜理にフッと笑われる。 「今、その子の事考えてんだろ?」 「うん」 「チッ。脳内お花畑かよ! でも、景がそんなになるなんて初めてじゃねぇ?そんなにいい相手なのかよ」 「……うーん。正直、自分でも分からないんだ。なんでこの人がいいんだろうって。でも、今までの相手とは全然違う。暇さえあれば、早く会いたいなとか、今度あの場所に連れて行ってあげたら喜ぶかなとか思っちゃうし」 「はぁ、景をそんな風にする子なんて、余程の魅惑の美女なんだろうな。今度紹介しろよ」 「え?」 「そうだ。来月、俺んとこの事務所の先輩主催の飲み会があんじゃん。そん時に連れてくりゃあいいんだよ。どうせ毎年派手に騒ぐんだから、誰がどのツレかなんて分かんねーし。俺だってエリの事連れて行く予定だぜ?」 エリ、とは桜理の恋人だ。 僕は別にいいけれど、修介はどう思うだろうか。 実は人見知りだって言っていたし、もしかしたらそういう場所は苦手なのかもしれない。 僕と付き合っているのを隠しておきたいのかもしれないし。 けれど、ふと思った。 親友の桜理とタケには、きちんと紹介しておきたい。 修介もこの二人と仲良くなってもらえれば、いろんな場所に一緒に行けるかもしれないし。 「うん。じゃあ聞いてみる。就活で忙しいみたいだから、都合が合えばだけどね」 「イェイ!すげぇ楽しみ」 「何が〜?」 電話を終えたタケが笑顔で覗き込んだ。 「来月の飲み会、景も彼女連れて来るってよ」 桜理が何故か得意げにタケに話す。 彼女、じゃないけどね。 「えっマジで?超楽しみー!俺も朗報。Dカップ癒し系美女も来てくれる事になったよん」 「えっ、何で?お前知り合いだったのかよ?」 「今ちょうど電話で話してたんだけどさ、なんとこの子友達らしくて。やべー。絶対Ⅾカップとエッチしよっと」 「てめぇ大概にしろよ?俺も混ぜて!」 ……やっぱりやめようかな。 いや、それ以外では本当にいい奴らなんだ。 裏を返せば盛り上げ上手。 仕事となればまるっきり違う顔を見せるから、尊敬もしているし。 取り敢えず、来週会った時に修介に聞いてみよう。 楽しみだな、修介の家。 修介をその場所に連れて行く、という決断が後々僕を苦しめる事となるとは気付かずに、呑気に二人の馬鹿な話を聞きながら日本酒を飲んで、しあわせな気分だった。

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